視察レポート
青森を代表する3つの祭りを体験・探究する(2025年4月号掲載)
2025-04-05
文・写真=(公財)日本修学旅行協会 事務局長 高野 満博
月刊「教育旅行」2025年4月号掲載
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。
昨年11月に、(一社)東北観光推進機構が主催する東北教育旅行現地研修会(青森方面)に帯同させていただき、青森を代表する祭り「ねぶた」「ねぷた」に関する施設を中心に、青森県内の教育旅行プログラムを視察した。
東京から新青森までは東北新幹線で3時間強、新青森駅から青森駅までは貸切バスで10分程度。青森駅周辺のベイエリアには、ねぶたの家・ワ・ラッセ、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸、青森県観光物産館アスパム、A―FACTORY(青森県産のりんごシードル工房と土産店等の複合施設)など様々な観光施設があり、団体でもグループ行動でも、訪問先として便利なエリアだ。
東京から新青森までは東北新幹線で3時間強、新青森駅から青森駅までは貸切バスで10分程度。青森駅周辺のベイエリアには、ねぶたの家・ワ・ラッセ、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸、青森県観光物産館アスパム、A―FACTORY(青森県産のりんごシードル工房と土産店等の複合施設)など様々な観光施設があり、団体でもグループ行動でも、訪問先として便利なエリアだ。
青森を代表する3つの祭り
今回の視察では、青森県を代表する3つの祭り、「青森ねぶた祭」「弘前ねぷたまつり」「五所川原立佞武多(たちねぷた)」に関する展示施設を一度に見ることができ、大変勉強になった。「ねぶた」「ねぷた」の起源は諸説あるが、はっきりとはわからないという。今は「坂上田村麻呂の蝦夷(えみし)征伐説」、「津軽藩藩祖為信(ためのぶ)の大灯籠説」、「農民行事説」の3つの説がよく語られているそうだ。そのなかでも3番目の、もともとは各地に伝わる「ねむり流し」から発展して祭りになったという説が分かりやすい。ねむり流しは、昔、農民が朝早くから夜遅くまで働いた夏の繁忙期に、襲ってくる睡魔や眠気を灯籠などに託して流したという行事から来ていて、秋田の竿灯(かんとう)祭りや仙台の七夕祭りも、このねむり流しから発展したという説だ。津軽では眠いこと「ねむてぇ」を「ねぷてぇ」と言い、これが転じて「ねぷた」になったというもので、青森市内では「ねむてぇ」を「ねぶてぇ」と言い、「ねぶた」になったという。探究心にかられ、帰ってからもう少し調べてみると、それ以外にもアイヌ語起源説など諸説あり、どれが正しいのか考えさせられる。生徒達にも見て考えてほしい素材だ。
●ねぶたの家・ワ・ラッセ
青森駅前にある「青森ねぶた祭」をテーマにした「青森市文化観光交流施設ねぶたの家・ワ・ラッセ」は、大型の屋内展示施設。天候を気にせず、大規模校でも安心してゆっくり見学できるのが魅力だ。ねぶた祭で使用され、賞を取った「人形型ねぶた」の実物が4基展示されていて、その迫力は圧巻だ。祭りの時には見ることのできない、ねぶたの内部を見ることもでき、その仕組みや構造がわかる。また、青森ねぶたの歴史や優れたねぶた制作者「ねぶた名人」を紹介する展示もあり、祭りを様々な面から解説している。ねぶたホールでは、祭りの映像が上映されていて、「ハネト」やお囃子などの祭り体験もできる。実際にそのステージを見学したが、あの独特のリズムと「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声で、生徒が大変盛り上がるとても人気の体験だというのが頷ける。実際のねぶた祭りは自由参加で、正装(花笠やタスキ等)をしていれば誰でも参加が可能だそうで、参加型で開放的な祭りだと感じた。
青森駅前にある「青森ねぶた祭」をテーマにした「青森市文化観光交流施設ねぶたの家・ワ・ラッセ」は、大型の屋内展示施設。天候を気にせず、大規模校でも安心してゆっくり見学できるのが魅力だ。ねぶた祭で使用され、賞を取った「人形型ねぶた」の実物が4基展示されていて、その迫力は圧巻だ。祭りの時には見ることのできない、ねぶたの内部を見ることもでき、その仕組みや構造がわかる。また、青森ねぶたの歴史や優れたねぶた制作者「ねぶた名人」を紹介する展示もあり、祭りを様々な面から解説している。ねぶたホールでは、祭りの映像が上映されていて、「ハネト」やお囃子などの祭り体験もできる。実際にそのステージを見学したが、あの独特のリズムと「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声で、生徒が大変盛り上がるとても人気の体験だというのが頷ける。実際のねぶた祭りは自由参加で、正装(花笠やタスキ等)をしていれば誰でも参加が可能だそうで、参加型で開放的な祭りだと感じた。
●津軽藩ねぷた村
弘前市のシンボル、弘前城のある弘前公園横の「津軽藩ねぷた村」は、津軽をテーマにした施設。館内には高さ10mの大型ねぷたの他、金魚ねぷた、津軽凧の展示があり、ねぷたの内部・骨組みも見学できる。お囃子や津軽三味線の実演もあり、実際に聞くとその迫力に圧倒される。3つの「ねぷた」「ねぶた」「立佞武多」の囃子や掛け声の違いを説明してもらい、その後に実演してもらったので、同じ青森の祭りでも地域により異なることが体感できて、とても面白く勉強になった。「弘前ねぷたまつり」は、城下町でお殿様も見学した祭りということで、京都の祇園祭りのような風流な感じかと思ったが、実際に聞くと太鼓の音はとても大きく、武士らしい勇壮さを感じた。館内には津軽蔵工房「たくみ」があり、津軽塗やこぎん刺、こけし・こま、津軽焼、津軽錦絵(ねぷた絵・凧絵)の製作実演が目の前で見られ、職人さん達は話しかけると気さくに応じてくれる。学校向けの製作体験もあり、金魚ねぷた・津軽凧・りんご土鈴の絵付けなど、様々な体験メニューがある。食事場所や売店もあり、様々な行程への組み入れが可能で、とても利用しやすい施設だ。
●立佞武多の館
五所川原市にある「立佞武多の館」では、実際にお祭りに使われる20mを越える3基の立佞武多(人形灯籠)が格納・展示されている。町中でひときわ大きな建物で、高さもかなりあり、ガラスの外壁の一部が可動式になっている。祭りになると扉が開き、町に出陣していくそうだ。館内に入ると、「おぉっ」と声が出るくらいの大きさで、まるでロボットアニメに出てくる格納庫のようだ。エレベーターで上にあがり、そこから螺旋状のスロープで、立佞武多の周りを見学しながら降りてくる。壁には、江戸後期から明治時代にかけて町の成長と共にねぷたが大型化し、大正期になると電気や鉄道の普及に伴い電線や高架橋ができたことで縮小されていった歴史が紹介されている。そして昭和五十年代に、明治時代の巨大ねぷたの写真と図面が発見され、復活の機運が高まり、平成八年に作成した「立佞武多」が復活の始まりだと紹介されている。また、立佞武多・青森ねぶた・弘前ねぷたのミニチュアもあり、これを見ると、立佞武多の巨大さがよくわかる。
立佞武多の館は、2025年4月から2026年6月末(予定)まで改修工事のため、しばらく見学できない。しかし、五所川原市は、文豪・太宰治の生誕地でもあり、太宰治記念館「斜陽館」がある。また、近くには津軽三味線会館があり、三味線の演奏や体験も可能なので、是非立ち寄りたい。
●青森県観光物産館アスパム
「AOMORI」の「A」を模した正三角形が特徴的な建物で、地上51mにある展望台からは、津軽海峡や八甲田山、岩木山等が一望でき、それぞれの位置関係もよくわかる。2階の体験ゾーンには360度スクリーンがあり、今回訪問した3つの祭りの映像を見ることができる。それぞれの迫力ある雰囲気がよくわかるので、前述の3施設と合わせて、行程に組み込みたい。1階には青森県産のお土産が一堂に揃っているので、買い物にもとても便利だ。
今回3つの施設を見学したことにより、青森を代表する祭り「ねぶた」「ねぷた」が各地で独自の形式・様式で発展し、維持され、また復活を遂げた歴史がよくわかった。また、それぞれ運営方法が異なることも興味深かった。「青森ねぶた祭」は企業協賛等により成り立っていて、ねぶたの前に企業名が入っているのが見られる。「弘前ねぷたまつり」は城下町の祭りということで、いくつかの町会が合同で運営している。そして「五所川原立佞武多」は、市が運営予算化して実施しているという。生徒達には、様々な形や人々の支えで「祭り」という文化が継承されていることを、実際に来てみて感じてほしい。
時を超え、縄文文化と現代美術に親しむ
●三内丸山遺跡
2021年に世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」を構成する特別史跡「三内丸山遺跡」は、青森駅前から車で約20分、教育旅行の行程に組み込みやすい場所にある。三内丸山遺跡は、縄文時代前期から中期の多様な遺構で構成された大規模な集落跡だ。
今回はボランティア・ガイドさんに付いてもらい、東京ドーム9つ分にもなるその広大な遺跡の一部を、一緒に歩きながら説明していただいた。大型掘立柱建物や竪穴建物が再現されていて、当時の暮らしを想像することができる。集落のメインの道は舗装もされていたようで、科学が発展していないだけで、基本的な部分は現代人と変わらないのだと改めて感じた。
敷地内には、縄文シアターや、勾玉や組ひも作りが可能な体験工房、レストラン等が入った「縄文時遊館」がある。特にその中にある常設展示室「さんまるミュージアム」は必見だ。北東北の大地に花開いた縄文文化を、発掘された土器や土偶等と共に、パネルや解説映像で丁寧に解説している。陸奥湾に注ぐ川沿いの台地上に存在した三内丸山ムラは、発掘された動物や魚の骨、釣り針などの道具から、クリやクルミといった森の恵みだけでなく、魚貝類の海の恵みもあり、食料も多彩で豊富だったことがわかる。また、発掘された土器には、ススや煮汁が吹きこぼれてきたコゲが付着していて、縄文人が煮炊きをしていた様子がわかる。館内映像では、長い年月の間に温暖化や寒冷化が起きながらも、環境変化に適応しながら定住し、採集・漁労・狩猟を基盤とした生活をしていたことが説明されていた。わかりやすい内容なので、是非見ていただきたい。
●青森県立美術館
青森県立美術館は三内丸山遺跡のすぐ近くにあり、教育旅行では一緒に訪問する学校が多いという。その白い建物は三内丸山遺跡から着想を得て設計されたそうで、モダンで開放感があり、都市部にはない自然と調和した美しい姿だ。青森を代表する芸術家・棟方志功、世界的な現代美術家の奈良美智(よしとも)、ウルトラマンなどの怪獣デザインで知られる彫刻家・特撮美術監督の成田亨など、青森県ゆかりの作家達の作品が中心に展示されている。巨大な白い犬の立体作品「あおもり犬」(奈良美智)や、大きなホールの壁に展示されているバレエ「アレコ」の背景画(マルク・シャガール)など、生徒達が関心を持ちそうな作品が多く、親しみやすい美術館だ。棟方志功の版画は、青森のねぶた絵に似ているような力強さも感じられる。学生団体は、各種体験も含めて入場無料で、旅行代金が上がっている現状では大変ありがたい。事前打合せをすれば、学校の希望に応じた見学にも丁寧に対応してくれる。
食事・宿泊施設情報
●青森のっけ丼
青森駅の近くには、朝食や昼食で利用できる青森魚菜センターがある。ここは屋内型の市場で、新青森駅開業を機に始めた「青森のっけ丼」を楽しむことができる。専用の12枚綴りの食事券が用意され、最初に丼ご飯に引き換えたあと、市場内のお店で好きな刺身や惣菜、味噌汁などを購入して、オリジナルの「のっけ丼」定食を作ることができる。スーパーやコンビニでしか買い物をしたことがない生徒にとっては、津軽弁のお店の人と会話しながら、店ごとに切り方の異なる刺し身や、惣菜を買うのは楽しく貴重な体験になるだろう。おすすめは、青森が日本でトップクラスの漁獲量を誇るホタテにイカ、ヒラメ、マグロ。また、名物の焼きたての甘くて濃厚な卵焼きも、お店によって形や味も異なっていて、食べ比べも楽しいので是非試してほしい。2階に団体用の席も確保できるので安心だ。
●ホテルグランメール山海荘(鰺ヶ沢温泉)
北前船が隆盛だった江戸時代に、津軽藩の御用港で栄えた鯵ヶ沢(あじがさわ)にある温泉施設・ホテル。小高い丘の上にあり、前庭に出ると日本海が一望でき、天気が良ければ日本海に沈む夕日が見られる。部屋の廊下からは岩木山も見え、津軽らしい景色が広がる。スタッフの対応も素晴らしく、出迎えは笑顔で、見送りもバスが見えなくなるまで手を振ってくれる。学校団体は最大260名の受入れが可能。
今回は、青森県の西側、津軽地域および青森駅周辺の施設等を中心に視察させていただいた。また、現地での意見交換会では、5つの市町村の地域課題について9つの切り口で考える『青森県「深」探究プログラム』や、リンゴ産業をテーマにした『弘前市SDGs教育旅行プログラム』など、青森県内の教育旅行プログラムも紹介していただいた。三方を異なる海に囲まれた青森県には、奥入瀬(おいらせ)渓流や十和田湖、八甲田山、恐山など、他にはない魅力的な場所やプログラムが多い。是非、教育旅行の候補地として検討いただければ幸いだ。
【問い合せ先】
青森県観光交流推進部誘客交流課
TEL:017―734―9384
(公社)青森県観光国際交流機構
TEL:017―722―5080
URL: https://aomori-tourism.com/school-trip
