視察レポート
陸前高田で学ぶ震災と復興(2025年5月号掲載)
2025-05-05
復興への希望の象徴/高田松原津波復興祈念公園
東日本大震災による犠牲者への追悼と鎮魂、震災の記憶と教訓の伝承、復興への強い意志を発信するために整備された高田松原津波復興祈念公園。広大な園内には、津波の直撃を耐え抜いたことで広く知られる「奇跡の一本松」をはじめ、震災遺構や津波伝承館などが点在している。
パークガイドの案内で震災遺構の一つ旧陸前高田市立気仙中学校を見学した。三階建ての校舎が当時のまま残されていて、見上げた先の屋上には津波の到達点を示す掲示版が立っている。屋上をも超えていった津波の高さにただ驚くばかりだ。
校舎内の廊下や教室には、数えきれないほどの瓦礫や泥をかぶった机や椅子が散乱している。折れ曲がった鉄板や廃材、むき出しになった無数の鉄骨や天井からの落下物からも、津波の破壊力が伝わる。
パークガイドの話によると、生徒や教職員は地震発生後すぐに避難場所に逃げた。しかし、川の水が大きく引くのを見た校長が大津波の到来を察知して、さらに高い場所への避難を指示・誘導した。こうして川の河口近くに建っていて、海岸が目と鼻の先の学校にも関わらず、犠牲者を一人も出さなかった。
多くの生徒の命を救った校長や教職員の、冷静で的確な判断に感銘を受けるとともに、日頃の防災教育の重要性を改めて考えさせられた。
パークガイドの案内で震災遺構の一つ旧陸前高田市立気仙中学校を見学した。三階建ての校舎が当時のまま残されていて、見上げた先の屋上には津波の到達点を示す掲示版が立っている。屋上をも超えていった津波の高さにただ驚くばかりだ。
校舎内の廊下や教室には、数えきれないほどの瓦礫や泥をかぶった机や椅子が散乱している。折れ曲がった鉄板や廃材、むき出しになった無数の鉄骨や天井からの落下物からも、津波の破壊力が伝わる。
パークガイドの話によると、生徒や教職員は地震発生後すぐに避難場所に逃げた。しかし、川の水が大きく引くのを見た校長が大津波の到来を察知して、さらに高い場所への避難を指示・誘導した。こうして川の河口近くに建っていて、海岸が目と鼻の先の学校にも関わらず、犠牲者を一人も出さなかった。
多くの生徒の命を救った校長や教職員の、冷静で的確な判断に感銘を受けるとともに、日頃の防災教育の重要性を改めて考えさせられた。
東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」は、三陸地方における津波の歴史や、東日本大震災の津波による被害と復旧・復興に関係する写真や映像、被災物などを展示している。潰れた消防車や折れ曲がった橋げたなどの展示があり、津波の凄まじさの一端を垣間見ることができる。2箇所のシアターでは、目を覆いたくなる映像も流れるが、震災を正しく理解するためにも見ておきたい。
館内の一角に、「三階に上がれば大丈夫」「最初の津波は低かった」「こんな山の中になぜ?」「三メートルの津波なら心配ない」など、犠牲になった人の言葉が残されていた。最悪を想定して行動することの大切さを後世に伝える貴重な言葉だ。しっかりと心に刻んでおきたい。
修学旅行生も数多く来館し、津波被害の歴史や教訓などを、伝承館が作成した「震災津波伝承ノート」を手にして学習していく。訪問前にノートを学校に送付してもらい、事前学習に役立てている学校もあるそうだ。
避難生活の不自由さを体感/3・11仮設住宅体験館
復興祈念公園から東に約3kmの中学校跡に、3・11仮設住宅体験館がある。震災当時、グラウンドに建っていた18棟89戸の仮設住宅のうちの2棟8戸を保存して見学や宿泊に活用している。
実際に入室してみて感じるのは、部屋の狭さ、壁の薄さ、床の冷たさ。「膝が痛くなり、床で寝るのが辛くなった」「隣が何を見ているのか分かるほどテレビの音が聞こえた」「冬は水道管の凍結・破裂が頻繁に起こった」など住んでいた人の声が書かれたカードが至る所に貼ってある。仮設住宅での不自由な生活が目に浮かび、家族や家財をなくし、生活設計もままならない被災者の不安な気持ちが伝わってきた。
最大25名までの宿泊利用が可能で、大学生や地元の小中学生の宿泊研修をはじめ、家族連れの利用もあるそうだ。食事は自炊。キッチンに立つと狭さや使い勝手の悪さが実感できるだろう。
希望すれば地元の語り部が仮設住宅での経験を話してくれる。苦労が多い反面、隣近所で支え合ったことや温かい支援で前向きに生活できたことも聞ける。
仮設住宅体験館での体験は、災害に遭った時の不自由さだけでなく、助け合うことの大切さを受け止める貴重な機会になる。
流失した資料の修復に努める/陸前高田市立博物館
陸前高田市立博物館は、津波によって施設は全壊、56万点にも及ぶ収蔵資料が流失する壊滅的な被害を受けた。46万点を救出して修復作業を継続しつつ、2022年11月に再開に漕ぎ着けた。
陸前高田の自然、歴史、郷土史などに関係する資料が整然と展示されているが、最大の特徴は、津波の爪痕が残る資料が見られることだろう。大きなクジラの背中に穴が開いていたり、小さな鳥のはく製に修復の跡が残っていたりする。泥に埋もれたヘルメットや茶わんなどの生活用品の数々も、震災の記憶を伝えている。
一般市民が河口やがれきの中から見つけた貝の標本や縄文時代の釣り針の展示もあった。博物館のためにという思いで届けた市民の行動に、復興の道を地域とともに歩んだ博物館がかけがえのない存在になっていることを感じさせられた。
博物館では被災した文化財の修復作業を来館者に常時披露している。細い筆を使って古文書を修復する繊細な作業を見ることができたが、膨大な時間と労力が今後も延々と続くと思うと頭が下がる。
陸前高田の自然、歴史、郷土史などに関係する資料が整然と展示されているが、最大の特徴は、津波の爪痕が残る資料が見られることだろう。大きなクジラの背中に穴が開いていたり、小さな鳥のはく製に修復の跡が残っていたりする。泥に埋もれたヘルメットや茶わんなどの生活用品の数々も、震災の記憶を伝えている。
一般市民が河口やがれきの中から見つけた貝の標本や縄文時代の釣り針の展示もあった。博物館のためにという思いで届けた市民の行動に、復興の道を地域とともに歩んだ博物館がかけがえのない存在になっていることを感じさせられた。
博物館では被災した文化財の修復作業を来館者に常時披露している。細い筆を使って古文書を修復する繊細な作業を見ることができたが、膨大な時間と労力が今後も延々と続くと思うと頭が下がる。
地域で支え合う/長洞元気村
陸前高田市の中心部から車で15分、広田湾に突き出た半島の一角に長洞(ながほら)元気村がある。長洞地区は60世帯のうち28世帯が津波で流失した。住民は地区内の仮設住宅で避難生活を送り「長洞元気村」と命名。朝市を開いたり、ボランティアと交流を深めたりした。全員が退去した2015年に一般社団法人長洞元気村(戸羽貢代表理事)として法人化した。
現在元気村の事務局長を務める村上誠二さんの家も2階まで津波に襲われ、今でも天井の梁がむき出しのまま。この自宅で防災学習のワークショップを続けていて、修学旅行生だけでなく外国人も災害時の行動の難しさなどを学んでいく。
長洞元気村では、村の高齢女性の集まり「なでしこ会」のメンバーが地産地消の料理を提供している。女性たちが話す震災後の村の歩みを聞きながらの和やかな食事が人気となっている。
現在元気村の事務局長を務める村上誠二さんの家も2階まで津波に襲われ、今でも天井の梁がむき出しのまま。この自宅で防災学習のワークショップを続けていて、修学旅行生だけでなく外国人も災害時の行動の難しさなどを学んでいく。
長洞元気村では、村の高齢女性の集まり「なでしこ会」のメンバーが地産地消の料理を提供している。女性たちが話す震災後の村の歩みを聞きながらの和やかな食事が人気となっている。
犠牲者の供養を語り継ぐ/普門寺
昼食・宿泊施設情報
ワタミオーガニックランド
東日本大震災津波伝承館から徒歩10分で、最大300名までの食事に対応できるワタミオーガニックランドに着く。自分好みのオリジナルハンバーガーを作る「手づくりハンバーガー体験」が修学旅行生に一番人気のメニューだ。「バーベキュー」や「弁当」もある。
ワタミオーガニックランドのテーマはSDGs。その一環として食事後の片づけや分別などは生徒が行い、フードロスや3Rへの意識を高めている。土の量を制限した「根域制限栽培園」や、農地の上部に太陽光発電パネルを設置して土地を有効活用する「ソーラーシェアリング」などSDGsに関わる施設の見学もできる。
陸前高田での民泊
陸前高田市の民泊は、山や海の古民家をはじめ、高台に移転した家庭など市内全域に受入家庭があり、一家庭4~5名、最大300名の利用が可能。野菜の種まき、収穫、海釣り、かき剥きなど農業・漁業の作業体験、食事づくりや受入家庭との交流など、お客さんではなく「家族の一員」として修学旅行生を迎え入れているという。民泊の家族と共に過ごす一日は、日常にはない田舎の暮らしを味わうまたとない機会となるだろう。また、震災を経験した受入家庭が多く、当時の話を聞かせてもらえるのも、陸前高田市ならではの民泊体験といえそうだ。
岩手県立野外活動センター
広田湾に突き出た半島の高台に岩手県立野外活動センターがある。広大な敷地には、運動広場、テニスコート、体育館などがあり学校や様々な団体の合宿・研修に利用されている。宿泊施設も充実していて、洋室や和室合わせて200名の宿泊が可能。宿泊者全員が一度に食事ができる食堂、100名定員の研修室も備えている。屋外のキャンプ場で、宿泊や炊き出し体験もできる。大浴場などの施設も充実していて、教育旅行の受入体制が整っている。宿泊をはじめ体験活動の料金は低廉に抑えられている。最近、修学旅行費が高騰していることからも、利用する価値の高い施設と言えるだろう。
今回の陸前高田市への訪問では、街の賑わいを取り戻すために尽力している商店主や震災前から続く伝統的な発酵文化を取り戻した人たちにも出会えた。よく言われることだが日本は災害大国。甚大な被害から立ち直った経験を踏まえ、災害に対する備えや共に支えあって生きることの大切さ発信し続ける陸前高田市にぜひ訪れ、自分事として学んでほしい。
【問い合せ先】
(一社)陸前高田市観光物産協会
岩 手県陸前高田市高田町字並杉300―2
TEL:0192―54―5011
URL:https://takanavi.org/
東日本大震災津波伝承館から徒歩10分で、最大300名までの食事に対応できるワタミオーガニックランドに着く。自分好みのオリジナルハンバーガーを作る「手づくりハンバーガー体験」が修学旅行生に一番人気のメニューだ。「バーベキュー」や「弁当」もある。
ワタミオーガニックランドのテーマはSDGs。その一環として食事後の片づけや分別などは生徒が行い、フードロスや3Rへの意識を高めている。土の量を制限した「根域制限栽培園」や、農地の上部に太陽光発電パネルを設置して土地を有効活用する「ソーラーシェアリング」などSDGsに関わる施設の見学もできる。
陸前高田での民泊
陸前高田市の民泊は、山や海の古民家をはじめ、高台に移転した家庭など市内全域に受入家庭があり、一家庭4~5名、最大300名の利用が可能。野菜の種まき、収穫、海釣り、かき剥きなど農業・漁業の作業体験、食事づくりや受入家庭との交流など、お客さんではなく「家族の一員」として修学旅行生を迎え入れているという。民泊の家族と共に過ごす一日は、日常にはない田舎の暮らしを味わうまたとない機会となるだろう。また、震災を経験した受入家庭が多く、当時の話を聞かせてもらえるのも、陸前高田市ならではの民泊体験といえそうだ。
岩手県立野外活動センター
広田湾に突き出た半島の高台に岩手県立野外活動センターがある。広大な敷地には、運動広場、テニスコート、体育館などがあり学校や様々な団体の合宿・研修に利用されている。宿泊施設も充実していて、洋室や和室合わせて200名の宿泊が可能。宿泊者全員が一度に食事ができる食堂、100名定員の研修室も備えている。屋外のキャンプ場で、宿泊や炊き出し体験もできる。大浴場などの施設も充実していて、教育旅行の受入体制が整っている。宿泊をはじめ体験活動の料金は低廉に抑えられている。最近、修学旅行費が高騰していることからも、利用する価値の高い施設と言えるだろう。
今回の陸前高田市への訪問では、街の賑わいを取り戻すために尽力している商店主や震災前から続く伝統的な発酵文化を取り戻した人たちにも出会えた。よく言われることだが日本は災害大国。甚大な被害から立ち直った経験を踏まえ、災害に対する備えや共に支えあって生きることの大切さ発信し続ける陸前高田市にぜひ訪れ、自分事として学んでほしい。
【問い合せ先】
(一社)陸前高田市観光物産協会
岩 手県陸前高田市高田町字並杉300―2
TEL:0192―54―5011
URL:https://takanavi.org/
