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掲載記事・視察レポート

視察レポート

日本の「領土・主権」について学び・考える領土・主権展示館(2025年7月号掲載)

2025-07-05
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文=(公財)日本修学旅行協会 編集部 中出 三千代
写真提供=領土・主権展示館

月刊「教育旅行」2025年7月号掲載
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。

東京・虎ノ門にある「領土・主権展示館」は平成三〇(2018)年に開館した国立の施設。小学生から大人まで誰もが日本の領土・主権に関する正確な理解を得られるよう、様々な資料を展示している。これまではパネル展示が中心で、情報量は豊富だったものの、デジタル世代の今の児童生徒には若干とっつきにくいところがあったという。そこで、本年4月に、テーマパークにも匹敵するような映像体験施設などを備え、学習指導要領の内容に合わせた学習プログラムも整備して、学校団体にも利用しやすい施設へと大幅にリニューアルした。今回、同館を運営する内閣官房領土・主権対策企画調整室のご案内で、新しい展示内容を中心に見学・体験させていただいた。
オープニング・ビジョン~北方領土・竹島・尖閣諸島コーナー
エントランスを入るとまず来館者を迎えるのが、オープニング・ビジョン。日本の美しい国土やそこで長く育まれてきた文化の素晴らしさを感じると共に、「領土・主権」とは何か、そして日本の領土である北方領土・竹島・尖閣諸島をめぐる問題を考えるための導入となる短い動画が流れる。

北方領土・竹島・尖閣諸島の各コーナーでも、各島々の歴史や現状について、分かりやすく解説した動画を観ることができる。動画は一般向けの他、小学生でも理解できるように編集した子供向けや、英語などの外国語バージョンも用意されている。動画を視聴した後、パネルの年表や写真、元島民が持ち帰った生活道具などの実物展示などについて、解説員が児童生徒の理解レベルに合わせたわかりやすい説明をしてくれる。領土・主権展示館には多くの資料が展示されている。これらの資料によって、児童生徒は北方領土、竹島や尖閣諸島が日本固有の領土であることを実感できるようになるだろう。

オープニングビジョン
北方領土・竹島・尖閣諸島コーナー
ヒストリー・ウォール~イマーシブ・シアター
ヒストリー・ウォールは、今回のリニューアルで新たに設置された、3つの大画面上にアニメーション映像を上映する大型映像装置。北方領土・竹島・尖閣諸島の歴史を大スケールで実感できる。計8分ほどのストーリー仕立てになっているので、児童生徒も各島の歴史を短時間で身近に感じることができるだろう。

イマーシブ・シアターも今回のリニューアルで導入された、各島の自然環境に入り込んだ体験ができる没入型の映像体験ゾーン。北方領土では、オホーツク海の豊かな海の世界から始まり、トドやアザラシ、そして海の王とも言われるシャチなどの生き生きした姿がすぐ間近に迫ってくる。エトピリカなどの鳥類や白いヒグマなど、珍しい生きものが次々と現れ、こんなに自然の豊かな島々なのだと感動を覚える。尖閣諸島のアホウドリや絶滅危惧種となった竹島のニホンアシカなど、各島を代表する生きものの生態もわかる。360度の映像で、空を飛んだり海に潜ったりする非日常体験ができる、児童生徒の驚きの声が絶えない展示ゾーンだ。

ヒストリー・ウォール
イマーシブ・シアター
キッズコーナー~日本政府の取組
ゲームやクイズで各島の知識を楽しく確認できるキッズコーナーに、新たに設置されたのがハンズ・オン・アースという大きな地球型映像装置。地球儀の球体の画面に触れると、その地域について学習指導要領に沿ったわかりやすい解説が横のディスプレーに表示される。地球儀は360度回転できるので、日本とその周辺地域との関係を立体的に見て把握できるのも面白い。

日本政府の取組のパネル展示では、厳しさを増す国際情勢の中で、領土を保全し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するための政府の取組方針を説明している。高校の地理総合、地理探究、公共などで参考となる資料だろう。
キッズコーナー
ハンズ・オン・アース
校外学習プログラムと学習資料
学校団体で領土・主権展示館を利用する際の標準的な所要時間は、展示館案内(5分)・展示解説(25分)・映像視聴(20分)・自由見学/質疑応答(10分)の約1時間だが、各学校の希望や児童生徒の状況等に合わせて、時間や学習内容の調整をしてもらえる(要事前予約)。1クラスを2~3グループに分け、1グループに1名解説員が付いて学習のガイダンスや質問にも対応してもらえるので、より深い学習が可能になる。

学習資料も充実している。ワークブックは小・中学生編と高校生編の2種類が用意されていて、学習指導要領に沿った理解の確認ができる。北方領土・竹島・尖閣諸島それぞれの詳細な解説パンフレットや、ヒストリー・ウォールやイマーシブ・シアターで上映される内容を解説した資料も用意されているので、事後学習や探究学習にも活用できるだろう。
今後の拡張部分
この秋には拡張部分がオープンして、3面スクリーンシアターとデジタル日本地図を備えた、レクチャールームとなる予定だ。レクチャー形式の利用や各種ワークショップの開催、昼食場所としても利用できるようになり、受入人数も大幅に増えるという。見学後の振り返りやグループワークもその場で可能となるので、より使い勝手がよい施設となるだろう。


ロシアによるウクライナ侵略などの国際情勢が厳しさを増す中、日本の子供たちが日本の領土、周辺国との関係及び国際社会における日本の在り方について考える機会を持つことは極めて重要だ。北方領土・竹島・尖閣諸島をはじめとする「領土・主権」に関わる国際情勢や、領域・海洋に関する学習は、中学校の社会科や高校の地歴公民科で扱われる学習内容だが、学習指導案や教材も少なく、指導に悩まれている先生方も多いのではないかと思う。領土・主権展示館では、児童生徒の理解を促す豊富な資料を用意し、解説員の適切なガイダンスもあるので、総合的かつ探究的な学習が可能となる。また、今回のリニューアルで導入された、「体験」「体感」できる映像資料やデジタル教材により、児童生徒は各島の歴史や自然環境などを身近に感じることができるだろう。

関東方面の修学旅行や校外学習のプログラムとして、十分に活用してほしい施設だ。


【施設概要・問い合せ先】
領土・主権展示館
東京都千代田区霞が関3―8―1 虎ノ門ダイビルイースト1階
開館時間:10時~18時
休館日: 月曜日(月曜日が祝休日となる場合はその次の平日休館)、年末年始(12月29日から1月3日)
入館料:無料
アクセス: 東京メトロ「虎ノ門」駅より徒歩1分、東京メトロ「霞ヶ関」駅・「虎ノ門ヒルズ」駅よりそれぞれ徒歩5分
※ 専用駐車場はございません。大型バスをご利用の場合は、別途ご相談ください。
TEL:03―6257―3715

★ 夏休み期間中に学校関係者向け見学会を開催! 展示解説のほか、団体利用の手続き、当日の対応体制なども説明します。詳細は、同館ホームページで(要事前予約)。

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