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掲載記事・視察レポート

視察レポート

韓日国交正常化60周年記念 韓日Edu Connect&新たな教育旅行先の視察(2025年12月号掲載)

2025-12-05
文・写真=(公財)日本修学旅行協会 理事長 竹内 秀一 

月刊「教育旅行」2025年12月号掲載
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。

2025年は、日本と韓国との国交が正常化して60年目にあたる。それを記念して、8月7日~10日に、韓国文化体育観光部協賛の下、韓国観光公社が主催するシンポジウム「韓日 Edu Connect」が開催され、多くの日韓の教員と教育関係者が集い、その後、訪韓教育旅行の推進に向けて新たな旅行先の視察が行われた。
日韓の教職員が集った韓日 Edu Connect
韓日Edu Connect 来賓あいさつ (文化体育観光部 観光政策局長 キムジョンフン氏)
韓日 Edu Connect には、日本から招かれた教員と地方自治体の関係者らおよそ120名、韓国の教職員およそ80名が参加した。この数字からも、日韓両国の先生たちの、互いの生徒同士の交流に対する関心度の高さが窺える。

オープニングのパフォーマンスのあと、アジュ大学のキム・ギョンイル教授による「AI時代の教育旅行と文化知能」と題しての基調講演があった。キム教授は、創作の領域までAIに委ねてよいのか、という問題を提起。AIは、パターンを学習して一定の枠内で働くのに対し、人間は、枠を破ることで好奇心が生まれ創作できる。したがってAIは、創作することができない、と結論付けた。

続く特別講演では、旅行作家のテ・ウォンジュン氏が、ソウルの四季折々の景観や食文化、優れた旅行インフラ、ソウルでの観光スポットなどについて紹介した。日本でも人気のある韓国の食が、ソウルだけでもとても多様であることがよくわかった。

その後、韓国観光公社が提供している「教育旅行支援制度」についての説明があった。支援は、10名以上の小・中・高校生の教育旅行団体及び大学生、韓国語・韓国文化関連団体を対象としていて、事前視察の往復航空券や学校交流校のマッチングなど、様々できめ細かい。海外教育旅行でほぼ必須となっている学校交流については、交流校が決まるのは訪韓予定日の2カ月前ほどで、学校の長期休業期間や入学シーズンの3月、大学入試がある11月はマッチングが難しいとのことだった。

事例発表では、最初に、教育旅行の新たな訪問先として世宗(セジョン)市が紹介された。世宗市は、行政機能と人口が集中するソウルの過密を解消し、地方との均衡発展を図るため、2012年に韓国の行政首都として計画的に造られた特別自治市で、多くの中央行政機関や博物館がある。世宗市という名称は、15世紀にハングルを創製した朝鮮王朝第4代国王世宗にちなんだものだ。

世宗市文化観光財団では、学校交流に際しての交流校のマッチングや体験プログラムへの参加費用支援などを行っているとのこと。ここを訪れた中央大学杉並高校と現地の高校との学校交流の様子も紹介された。両校の生徒たちが、互いのパフォーマンスやグループ活動を通して、仲良く楽しそうに過ごしていたことが印象的だった。

ついで、B&Sプログラムについて、誠信(ソンシン)女子大学4年生のキム・ジヒさんから、自身の経験を踏まえての発表があった。日本の生徒たちをガイドしての成果として、安全に十分配慮しながら、できる限り日本の生徒が希望する場所を案内できたこと。生徒からは、現地の人との対話や交流、日本とは異なる文化体験ができ特別な思い出になった、という感想が寄せられたことなどがあげられた。B&Sプログラムは、同世代の若者同士が緊密に交流することを通して、互いに成長できる貴重な体験活動になる。海外教育旅行にはぜひ取り入れてほしいプログラムだと、改めて感じた。

その後、各テーブルでの歓談に移ったが、それぞれ時間が不足するほど盛り上がっていた。教育旅行誘致に対する韓国側の熱い思いが伝わってくるとともに、日韓両国の先生たちが率直に交歓する機会を持つことができた有意義なシンポジウムだった。
行政首都・世宗市
国立世宗樹木園

韓国中部に位置する世宗市へは、高速道路を利用すればソウルから70分ほどで行くことができる。計画的に造られた新しい都市だが、緑化率は52%と韓国第一位で、「庭園観光都市」という一面も持っている。

それを象徴するのが国立世宗樹木園。広大な敷地に、四季温室、古くから受け継がれてきた庭園文化の発展を図る韓国伝統庭園、盆栽園などがあり、多様なテーマで多くの植物の観察ができる都市型植物園だ。それら施設のうち、韓国最大のガラス温室という四季温室を視察した。

歓迎のセレモニーでは、地元のヤンジ高校の生徒たちが、映画をテーマにした日本語劇を披露してくれた。その後、解説員の案内で熱帯展示温室や地中海展示温室などを見学。日本でもよく見る観葉植物モンステラの葉が分かれているのは、下草に配慮して雨を通すため、といった気候と植物との関係について詳しい説明があった。また、オーストラリア原産ですでに絶滅したというマツの一種が育てられているのを見ることができた。

日本にも多くの植物園があるが、ここでは、環境変化への対応や植物多様性の保全、植物遺伝資源の管理・利用など国としての取り組みを学ぶことができる。多種多様な植物を見て楽しむのもよいが、解説員のガイドがあれば植物の見方が変わり、植物園の役割も理解することができる。そのような「学び」の場として、この樹木園に訪れてほしい。

国立世宗樹木園
樹木園の四季温室
大統領記録展示室の展示
大統領記録展示館

韓国の初代大統領・李承晩(イ スンマン)氏から始まる歴代大統領の在任中の事績をはじめ、大統領に関わる文書や写真・映像などの記録を保管する大統領記録展示館が世宗市にある。

展示室を見学しながら、4階から地下1階へと降りていく。4階に展示された各大統領の自筆の書は、それぞれの人となりが現れていて興味深い。3階には、大統領執務室や接見室などが再現され、人気のフォトスポットになっている。また、歴代大統領の肖像画と記録の展示もあり、イマーシブデジタルギャラリーでは大統領府をデジタル映像で体感することができる。2階には各国からの贈答品、地下1階には、キャデラックなど13代~17代の大統領専用車の実物が展示されていて、車好きには多くの見学時間が必要になるだろう。

歴代大統領の事績を通して韓国の現代史を学ぶことができる大統領記録展示館は、世宗市を訪れるなら外せない施設だ。

百済最後の都・泗沘(扶余)
百済文化団地

古代日本との関係が深い百済(ペクチェ)は、4世紀半ばに建国されたのち、都を漢城、熊津、そして538年には泗沘(サビ)(現在の扶余[プヨ])に移した。この頃に百済の文化は最盛期を迎えたとされる。

その時代の王宮(泗沘宮)を中心に、寺院や百済の人々の住宅などを再現し、貴族の墓(古墳)を移転・復元した歴史テーマパークが百済文化団地だ。

正陽門を入ると正面に見える重厚な建物が、泗沘宮のなかでも王の即位儀礼など重要な国家的行事が行われた天政殿。奈良・平城宮の大極殿とよく似た建築様式で、日本との関係性が窺われる。内部には、王座や当時の衣装などが展示されていた。天政殿の右手には再現された陵寺がある。陵寺は、日本に仏教を伝えた聖王の冥福を祈って建立された寺院。当時のままに再現された高さ38mの五重塔など、その伽藍を見ていると、まるで日本の寺院にいるような感覚になる。

「古墳公園」に移転された7基の古墳の、遺体を納めた横穴式石室は、日本で見られる石室の造りとほとんど変わらない。日本の横穴式石室は、渡来人によって伝えられたものだが、そのことが実感できる。「生活文化村」のエリアには、貴族から庶民まで様々な階層の人々の住宅が再現されていて、身分による住宅のつくりの違いがよくわかる。百済の人々の暮らしぶりは、団地内にある「百済歴史文化館」の展示でわかりやすく紹介されているので見ておきたい。

百済文化団地の一部を視察しただけだが、それでも、百済の文化レベルの高さと当時の日本が百済から受けた文化的影響の大きさを実感することができた。とにかく広く、興味深いものが多くあるので十分に時間をとって見学したい。
百済文化団地
復元された天政殿
定林寺址に建つ石塔
定林寺址

定林寺は、百済の都・泗沘の中心に建てられた大寺院だった。ただし、定林寺とは高麗時代の寺院名で、百済時代の寺院名は判明していない。現在、寺院の建物は残っていないが、中門や金堂、講堂の跡などが保存されていて、それらが一直線に並ぶ大阪の四天王寺と同じ伽藍配置だったことが確認できる。百済時代の建造物として唯一現存しているのが、定林寺址(ジョンリムサジ)の中央に建つ5層の石塔で、韓国の国宝であるとともにユネスコの世界文化遺産にも指定されている。

石塔は、基壇を除くと108個の石材を巧みに組み上げたもので、造形にはそれまでの木造仏塔の特徴が見られ、仏塔が木造から石塔に変わり始めたころのものと推定されている。建立当時から現在まで解体されたことがなく、1400年もの間、地震や水害にも耐えてきた貴重な文化財だ。なお、石塔には、唐・新羅連合軍が、660年に百済を滅ぼしたことを記念して唐の将軍が刻んだという「大唐平百済国碑銘」という文字が残されている。百済の歴史を物語る重要な史料なので、ぜひ目にとめておきたい。

百済は、古代日本との関係が深かっただけに、日本と通じるものが多い。その都に建立された大寺院の史跡・定林寺址は、扶余で必ず訪れたいスポットだ。
金銅観音菩薩立像(左)と百済金銅大香炉(右)
国立扶余博物館

定林寺址から車で約5分、八角形の建物が百済の歴史と文化を発信する国立扶余博物館で、およそ1、000点の遺物や文化財を展示している。

館内には、中央のホールを囲むように4つの常設展示室が配されている。中央のホールでは、百済の文化をテーマとする幻想的な映像が天井に映し出される。それを鑑賞した後、各展示室を見学した。第1展示室では、出土遺物を通して青銅器時代から百済の前身にあたる馬韓までの文化の様相を知ることができる。第2展示室では、百済泗沘時代の暮らしや文化を紹介しているが、見逃せないのが百済芸術の最高傑作とされる国宝・百済金銅大香炉だ。この金銅大香炉は、百済王族の墓地である扶余の陵山里(ヌンサンニ)古墳群に隣接する王室寺院跡から出土したもの。高さ61.8cmと大きく、蓮の花をかたどった香炉の本体とそれを支える龍、蓋に施された仙人が住む博山やその頂にいる鳳凰など、細部に至るまでの複雑で精緻なデザインは美しく、かつ神秘的な雰囲気を醸し出している。

第3展示室で紹介される百済の仏教文化では、金銅観音菩薩立像が必見。東京国立博物館の法隆寺宝物館に展示されている朝鮮半島から渡来したとされる金銅仏とそっくりな姿形で、日本の仏教文化が、百済の多大な影響を受けて形成されたことが実感できた。

この博物館に展示されている百済の工芸品は、金銅大香炉に限らずどれもが手の込んだ細かなつくりで、職人の高度な技術が窺われ見ごたえ十分。ぜひ時間をかけて見学したい。
ファッションと食の街・清州市内
   ソンアンギル(上)とサムギョプサル通り(下)
ソンアンギルとサムギョプサル通り

清州(チョンジュ)市は、韓国のほぼ中央に位置する忠清北道(チュンチョンプクド)の中心都市で、ソウルからは、車で約1時間40分。東京や大阪、福岡などからの直行便も着発する清州国際空港がある。

清州市の中心部には、街を防御するため高麗時代・朝鮮時代に清州邑ウプ城ソンが築かれた。その城壁の内側にある通り=「ソンアンギル(城内道)」は古くから最も賑やかなエリアで、現在も清州一の繁華街として多くの若者が行き交っている。

道の両脇にはファッション、コスメ、雑貨、アクセサリーの店が並び、カフェやレストラン、映画館なども集まっているおしゃれな街だが、一歩路地に入ると昔ながらの建物や個人商店なども見られ、韓国の新旧が混在する面白さがある。ソウルとは違う、ローカルな繁華街の雰囲気が味わえる、まち歩きにはぴったりのエリアだ。

清州邑城西門の外に西門市場があり、その中に「サムギョプサル通り」という一角がある。サムギョプサルは、厚切りの豚バラ肉を鉄板で焼き、サンチュやえごまの葉などに巻き、好みでキムチやニンニクを添えて食べる焼肉料理で、日本でも人気がある。清州は、その発祥の地とされていて、朝鮮時代には豚肉を貢物として納めたという15世紀の記録も残されている。実際、昔から清州の人々は、ことあるごとに豚肉を分けあって食べていたという。

340mほどの通りに、多くのサムギョプサル専門店が軒を連ねているが、訪れたのが食事時でなかったためか閉まっている店が多く、活気はあまり感じられなかった。それでも、ほとんどの店が営業している食事時には、かなりの人で賑わうだろうことが想像できた。ソンアンギルにも近く、班別行動での昼食には格好のエリアだといえる。


現在、中学・高校の国内修学旅行はコロナ禍前に戻っているが、海外修学旅行はまだ回復に至っていない。その主な理由は、円安の影響もあって旅行費用が高騰しているため、公立学校が海外修学旅行を以前のように実施できていないことにある。公立学校の訪問先として人気だった台湾への修学旅行が減ってしまったことは、それを象徴的に示している。

代わって、今、注目されているのがお隣の韓国だ。韓国への修学旅行は、日韓両国の間の政治上・外交上の問題などによって、コロナ禍前には大きく減っていた。しかし、今、生徒たちの間では、K-POPや韓国コスメ、韓国の食などが大人気で、韓国の生徒たちも日本のアニメやゲームなどに強い興味・関心を持っているという。

韓国は日本から近く、現地での活動時間がたっぷりとれる。学校交流やB&Sプログラム、歴史・文化学習や芸能体験などの多彩な体験プログラムも用意されていて、韓国観光公社による様々な支援も期待できる。物価も日本とそれほど変わらず、衛生環境や治安にも不安はない。近代史における日本と韓国の歴史をしっかり学んだうえで韓国に訪れ、同世代の若者同士が交流し、互いの理解を深めることは、これから先、日韓両国のより良い関係を築いていくうえで何より大切なことだと考える。

海外修学旅行を考えている学校には、ぜひ、韓国を訪問先として検討していただきたい。

【問い合せ先】
韓国観光公社 東京支社
TEL:03―5369―1755
 大阪支社
TEL:06―6942―0847
 福岡支社  
TEL:092―471―7174
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