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掲載記事・視察レポート

視察レポート

北東北「秋田」「青森」の独自の歴史・文化・産業を体験する(2026年3月号掲載)

2026-03-06
文・写真=(公財)日本修学旅行協会 事務局長 藤川 誠二

月刊「教育旅行」2026年3月号掲載
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。

東北6県と新潟県を対象エリアとし、教育旅行の誘致や観光の力による東北の活性化に向けた活動を展開している(一社)東北観光推進機構が、昨年10月に実施した東北教育旅行現地研修会に参加する機会を得た。今回は秋田県北部(一部青森県)の教育旅行プログラムを視察させていただいた。

秋田県では、仙北(せんぼく)市の「わらび座」や小坂町の「康楽館」、男鹿(おが)市の「なまはげ館」など、地域独自の文化体験が特色となっている。また農家体験も人気のあるプログラムだ。2024年度以降は、SDGs関連のプログラムづくりに注力していて、特に風力発電などの再生可能エネルギーをテーマとしたものの磨き上げを進めている。また、北海道からの修学旅行を多く受け入れていることから、関係機関と連携して定期的に北海道を訪問し、学校の意見を積極的に聞きながら、地域資源を活用した教育コンテンツの魅力向上と多様化を図っている。


北秋田・青森の豊かな歴史・文化・産業を体感

●康楽館(秋田県小坂町)

明治時代後半に日本一の銅の産出を誇った小坂鉱山の厚生施設として、明治四三(1910)年に建てられた芝居小屋・康楽館は、外観はモダンな洋風建築、内部は純和風で伝統的な歌舞伎小屋の仕掛けを備える、和洋折衷の珍しい建築様式が特徴だ。設立経緯が小坂鉱山に働く人を含む地域住民のための娯楽施設だったことなど、その歴史を学ぶことができる。

修学旅行時期は、人情味あふれる時代劇と華麗な舞踏ショーもしくは宝塚のような夢のレビューショーの公演になることが多く、生徒が舞台にあがって役者と絡むこともあり、とても盛り上がるそうだ。小劇場ならではの臨場感溢れる中での観劇は、生徒たちにとって素晴らしい体験になることだろう。バックヤードの見学も可能で、回り舞台などの昔ながらの仕掛けや、明治時代からの役者の落書き(サイン)が壁に残る楽屋は必見。有名な歌舞伎役者や俳優のサインも数多くあり、歴史ある康楽館の舞台に立つことを長年夢見ている人も多いのだそうだ。芝居の休演日には館内のレクリエーション利用も可能。行程の都合で昼食時間の確保が難しい場合などには、座席で幕の内弁当を食べることもできる。

●小坂鉱山事務所(小坂町)

すべて天然秋田杉造りとされる木造三階建て、ルネッサンス風の明治を代表する洋風建築で、国重要文化財に指定されている。明治三八(1905)年に日本一の大鉱山のシンボルとして建設された豪壮華麗な建築美は、当時の小坂鉱山の繁栄を物語っている。現在は観光施設として、小坂鉱山の歴史や建築に関する資料が展示されている。館内は広くないので、大人数の場合は、40名程度ごとに時間差をつけて見学した方がよいだろう。

現在は、鉱石の採掘はしていないが、黒鉱(くろこう)自溶(じよう)精錬などのこれまでに培われた技術を活かし、使用済みとなった電気・電子製品などから再び金属を取り出すリサイクル製錬へと移行し、今では日本を代表する「都市鉱山」として活躍している。

注:多様な金属を含む黒鉱と呼ばれる鉱石を、自溶炉という特殊な炉で溶かし、粗金属を取り出す技術
康楽館
小坂鉱山事務所
尾去沢鉱山入口
●史跡尾去沢鉱山(秋田県鹿角(かづの)市)

小坂鉱山と共に日本を代表する鉱山だった尾去沢(おさりざわ)鉱山。その銅鉱脈群採掘跡や江戸時代の手掘り坑道を見学できる。坑道内では約900万年前の地層が露出している場所もあり、直接触れることもでき、鉱山の歴史を肌で感じられる貴重な施設だ。2026年4月以降、一般公開は終了してしまうが、修学旅行などの学校行事については予約制で受入れを継続するそうだ。砂金採り体験も終了となるが、実際に鉱山の中を歩くことができるので、当時の様子をイメージしやすい。ガイドが2名しかいないため、2クラスまではガイド付きでの見学が可能だが、3クラス以上の場合は坑道内自由見学で、要所要所でスピーカーでの説明を聞くことになる。ガイドによる解説を付けたほうが学習効果が高まるので、他の見学箇所とローテーションするなど、工夫してみてほしい。
   旧関善酒店 木造架構
●旧関善酒店(鹿角市)

関善酒店(せきぜんしゅてん)は、安政三(1856)年に創業した造り酒屋。国登録有形文化財に指定され、秋田県を代表する明治期の伝統的商家の建物を、ガイド付き
で見学できる。造り酒屋としては昭和五八(1983)年に廃業しているが、地域の経済、文化の発展に寄与してきた様子をうかがい知ることができる。特に日本最大級と言われる吹き抜け木造架構は本当に見事で、当時の家具、道具など貴重な品物の数々も間近に観ることができる。レトロ感満載で、古いおもちゃなど生徒たちの興味を引く展示品も多い。ここもあまり広くないので、班別自主行動またはクラス別コースでの訪問がおすすめだ。

●特別史跡大湯環状列石・大湯ストーンサークル館(鹿角市)

大湯環状列石は、約4000年前の縄文時代後期につくられたとされる日本最大級のストーンサークルで、縄文文化を象徴する重要な遺跡。2021年には、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一つとして世界文化遺産に登録された。隣接する掘立柱建物や周囲から出土した祭祀の遺物などから、葬送儀礼や自然に対する畏敬の念を表す儀式を行う祭祀施設だったと考えられている。

大湯ストーンサークル館は、そのガイダンス施設。展示ホールでは、大湯環状列石の成り立ちや発掘調査の歴史などを解説したパネルや、出土品を展示している。展示品のひとつである土版は、出土品としての価値に加え、そのフォルムが可愛らしいと人気なのだそうだ。

団体見学の場合、事前申し込みが必要だが、ガイドの案内のもとでの見学が可能。また高校生までは展示ホールの入館料が110円(20名以上の団体は90円)と、とても安価なのも助かる。遺跡をゆっくり散策する時間と合わせての訪問をおすすめしたい。勾玉ペンダントや土器の手作り体験も可能だ。
土版
大湯環状遺跡
●道の駅かづの あんとらあ(鹿角市)

鹿角市の中心に位置する道の駅で、鹿角や秋田のお土産を数多く取り揃えている。昼食場所としても利用でき、席数が充分あるので大規模校でも問題ない。

きりたんぽ発祥の地である鹿角市ならではの「みそ付けたんぽ作り体験」ができる。また、日本一の祭り囃子とも称賛される鹿角市最大の祭り「花輪ばやし」の、豪華絢爛な屋台を見学できる「花輪ばやし祭り展示館」も併設されている。今回の視察では、花輪ばやし祭り展示館の見学、みそ付けたんぽ作り体験、昼食、お土産購入、という流れで、約2時間の滞在だった。

筆者は今回体験した「みそ付けたんぽ」のことをずっと「きりたんぽ」だと思っていたのだが、ご飯を潰したものを棒に巻き付け焼いたのが「たんぽ」で、このたんぽを食べやすく切ったものが「きりたんぽ」なのだそうだ。そんな解説も交えながら指導してくれる講師との触れ合いも含めて、たんぽ作り体験はとても楽しい時間だった。手軽でありながらも郷土料理を学ぶことができ、できたたんぽをすぐに食べられる喜びも大きいので、ぜひおすすめしたい。

花輪ばやしの屋台
みそ付けたんぽ作り体験
弘前ねぷた
●津軽藩ねぷた村(青森県弘前市)

弘前の夏の夜を彩る重要無形文化財の弘前ねぷたまつりをはじめ、津軽の民工芸品、津軽三味線の生演奏など、津軽の伝統文化を丸ごと見て、体験できる施設だ。扇形になっていて、上品で華やかと言われている弘前ねぷたを間近に見ることができる。青森ねぶた、弘前ねぷた、五所川原立佞武多(たちねぶた)の歴史や成り立ち、それぞれの山車の違いなども解説してくれる。掛け声やお囃子、太鼓の実演も迫力があり、壁掛け扇ねぷた作りや金魚ねぷたの絵付け、津軽弁講座、津軽三味線演奏体験など、各種体験メニューも豊富に揃っている。学校の規模に合わせ、臨機応変な対応で見学できる、教育旅行に適した施設だ。


宿泊施設情報

●大湯温泉 ホテル鹿角

大湯ストーンサークル館からほど近いホテル鹿角は、これまで紹介した見学先や十和田湖周辺、八幡平(はちまんたい)など、秋田・青森・岩手を巡るのに最適の立地だ。レクリエーションや班長会議ができる宴会場・会議室が充実していて、宿泊階の廊下が一直線で生徒の動きを把握しやすく、男女各約80人まで一度に入浴が可能な大浴場があることなど、教育旅行受入れ施設としての満足度が高い。毎年県内外から多くの学生団体を受け入れているので、安心して利用できるホテルだ。


東北ならではの「新しい学びのプログラム」

今回視察した箇所は以上だが、東北・新潟各県ではそれぞれ「新しい学びのプログラム」を提案している。

●青森県【 青森で深く学ぶ「深」探究プログラム】

●岩手県【生きる力を育む感動体験!】

●宮城県【みやぎ感DO!プログラム】

●秋田県【秋田で学び、秋田で感じる旅】

●山形県【「探究型」教育旅行×SDGs】

●福島県【ホープツーリズム】

●新潟県【 ここでしか学べない、未来へ、つながる、にいがた体験】

各プログラムの詳細やモデルコースなどは、東北観光推進機構のサイト「東北まなび旅」で確認できる。教育旅行の方面検討の際に、参考にしていただければ幸いだ。

【問い合せ先】
(一社)東北観光推進機構
TEL:022―721―1291

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