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掲載記事・視察レポート

視察レポート

震災の記憶と自然・歴史・文化から学ぶ「宮城」の教育旅行プログラム(2026年6月号掲載)

2026-06-08
文・写真=(公財)日本修学旅行協会 理事長 竹内 秀一

月刊「教育旅行」2026年6月号掲載
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。

東日本大震災から15年が経過し、宮城県の被災地では着々と復興が進んでいる。また、震災の遺構や伝承施設が整備され、震災・防災の学習プログラムもブラッシュアップされるなど、震災の記憶や教訓を未来に伝えるための取り組みも積極的に行われている。

宮城県には、ほかにも、豊かな自然をテーマにしたSDGs学習や、仙台藩に関わる歴史・文化学習など、教育旅行に向けた多彩なプログラムがある。

昨年、宮城県が主催する教育旅行モニターツアーに、神奈川県の公立中学校の先生方とともに参加させていただいた。
南三陸での震災学習、防災・減災学習
南三陸311メモリアル
南三陸町は、東日本大震災で最大20mを超える津波により壊滅的な被害を受け、831名もの町民が犠牲になった。ツアーでは、このエリアの震災・防災学習のプログラムを体験した。

▼南三陸311メモリアルのラーニングプログラム

志津川湾に注ぐ八幡川(はちまんがわ)の傍らに建つ、独特の外観をもつ建物が震災伝承施設・南三陸311メモリアルだ。

施設内には、被災した方々の証言映像などを視聴できる展示ギャラリーや自然と人間、いのちについて静かに思いを馳せる現代アートのゾーン、そしてラーニングプログラムで利用する専用シアターが設けられている。

ラーニングプログラムのうち、展示の見学と映像の視聴を組み合わせたレギュラープログラム(所要時間約60分)は3つ。いずれも、配布された防災ミニブックを活用しながら進められる。映像は、町民の被災体験をもとに構成されたドキュメント。ただ視聴するだけでなく、途中で「避難場所が使えなくなったら次にどこに向かうか。そこにたどり着くまでの問題は?」といった問いかけがある。その問いに対して、自分の考えや仲間と話し合ったことを防災ミニブックに書いていく。生徒たちは仲間の考えに触れることで、新たな気づきを得られるはずだ。南三陸311メモリアルは、被災した方々の証言から震災の実相を学び、防災・減災について、自分ごととして考えることを促す「学び」の施設だ。
「まちあるき語り部」プログラム
▼「まちあるき語り部」プログラム

南三陸311メモリアルに隣接して南三陸復興祈念公園がある。ここは、かつて南三陸町の中心エリアだった。

このプログラムでは、大震災を経験した地元の「語り部」さんの話を聴きながら、「祈りの丘」に続く「記憶のみち」を上っていく。途中、赤い鉄骨の骨組みだけを残す高さ約12mの旧防災対策庁舎を間近に見た。この庁舎では屋上をはるかに超える津波によって43名の方々が亡くなったという。津波の恐ろしさが伝わってくる震災遺構だ。廃駅となったJR旧志津川駅のプラットホームも見える。語り部さん自身の震災体験や当時の町の様子、また復興の状況など、この町に住んでいた方でなくては語れない貴重なお話しを聴くことができた。

丘の上には、東日本大震災で犠牲になった方々の名簿を納める「名簿安置の碑」が建てられている。碑の前で黙祷。ここから望む志津川湾は穏やかで、15年前、ここから大津波が押し寄せてきたことがにわかには想像できない。災害は、いつ、どのように起きるかわからないと、あらためて感じさせるプログラムだった。
南三陸さんさん商店街
▼南三陸さんさん商店街

大震災で被害を受けた店舗が集まり、震災の翌年にオープンした仮設商店街が、2017年に常設の南三陸さんさん商店街としてリニューアルオープンした。

南三陸311メモリアルの向かいに6棟の木造平屋の建物が並び、飲食店や鮮魚店、土産店など様々な店舗が入っていていつも賑わっている。南三陸の海の幸を使った「キラキラ丼」や志津川名産のタコが人気で、昼食を摂ったり、お土産を購入したりするには絶好の場所だ。

SDGsの探究学習プログラム
▼南三陸町のSDGs学習プログラム

南三陸町では、SDGs学習に関するアクティブラーニング型のプログラムも用意されている。ツアーでは、町の基幹産業の一つ林業をテーマにした「持続可能な社会に必要な森林と農業」というプログラムを体験した。

プログラムは、イントロダクション→グループワーク→発表・まとめ・質疑応答と続く120分の構成になっている。

イントロダクションでは、森林が木材や燃料・食料などを供給するだけでなく、COの固定、生物多様性の保全、水資源の涵養、土砂災害の防止といった多面的な機能を持っていること。その機能を発揮させるためには森林の維持・造成が必要で、林業はその役割も担っている。林業の衰退を防ぐためにはもっと国産材を利用する必要があることなど、森林やそれを管理する林業の大切さを学んだ。

グループワークでは、森から生まれた身近にあるもの、木でできていたら良いと思うものをあげ、自分が森のためにできることを話し合いながら考え、ワークシートに書いていく。そして、各グループからの発表、ファシリテーターのまとめとなる。

今、石油由来の製品があふれる一方で森林の荒廃が進んでいる。それが将来何をもたらすか…。生徒たちも、このプログラムを通して、自分の暮らしと森林や林業との関りに目を向け、持続可能な社会の在り方を自分ごととして考えることができるだろう。

▼世界農業遺産「大崎耕土」の居久根

宮城県北部の大崎地域では、春~夏に吹く冷たく湿った風「やませ」による冷害や地形が原因となって起きる洪水・渇水に対応するため、様々に工夫しながら農業を行ってきた。取水堰やため池などの水管理システム、冬の季節風や洪水から家を守る屋敷林「居久根(いぐね)」がそれで、この地域の農村景観、伝統的な農・食の文化などと併せ、大崎平野の農地(大崎耕土)は世界農業遺産に認定されている。居久根のあるお宅を訪問させていただき、お話を伺った。

母屋を囲むようにいろいろな種類の樹木が植えられているが、北西側にあるスギやケヤキなどは冬の季節風対策用。このお宅では、それ以外にもタケを植えていて春にはタケノコを採っている。クリやカキ、ウメといった果樹も多く、これらも大切な食料とされる。また、居久根の伐採した枝は燃料に、落ち葉は肥料にする。居久根には多くの鳥がやってくるし、カエルや昆虫にとってもよい棲み処になっていて、カメムシなど稲の害虫を食べてくれるそうだ。居久根の集落で受け継がれてきた行事についてのお話もあった。

400年続いてきた居久根だが、近年の高齢化などによって維持・管理が難しくなり、減ってきているという。持続可能な社会とは何なのか、あらためて考えさせられるプログラムだ。

▼蔵王ジオパークでの学びと体験

地球の活動が生み出した地質や地形、その上に育まれた自然とそこで暮らす様々な生き物、そしてそれらと共に生きてきた人々の歴史や文化。ジオパークは、大地を通してそれらのつながりを学び、未来を考えるためのエリアだ。

蔵王山の東山麓に広がる蔵王ジオパークは、昨年、日本ジオパークに認定された新しいジオパーク。5つのエリアで構成されているが、今回は、蔵王ジオパークセンターがある遠刈田(とおがった)エリアのフィールドワークを体験した。

ジオパークセンターには、蔵王の地形・地質を紹介する模型や火山から噴出された火山弾、岩石の標本などが展示されている。ここで、活火山の蔵王山・活動休止中の青山麻(あおそやま)・カルデラの名残をとどめる円田(えんだ)盆地の「3つの火山」によってつくられた蔵王ジオパークエリアの特色などについて、専門員さんからレクチャーを受けた。その後のフィールドワ―クでは、認定ガイドさんの案内で、仙台藩が採掘した金山の跡「岩崎山金窟址」と、金山で犠牲になった抗夫を弔うために観音像を安置したことがはじまりという「籠山観音堂」を見学した。こうした史跡をたどることもジオパークでの「学び」だ。

蔵王ジオパークは、学校のニーズに応じて様々なツアーコースを提案している。なかには、蔵王の御釜までトレッキングしながら、火山の恵みや自然環境への影響などについて学ぶ学校もあったそうだ。このエリアで体験活動をするなら、ぜひ蔵王ジオパーク推進協議会に相談してほしい。
大崎耕土「居久根」の集落(写真提供:宮城県観光戦略課)
蔵王ジオパークのプログラム
歴史学習と伝統工芸体験
サン・ファン・バウティスタ号の1/4復元船
▼支倉常長と慶長使節船のミュージアム

慶長一八(1613)年、仙台藩主伊達政宗は、ノビスパニア(メキシコ)との通商と宣教師の派遣を要請するため、イスパニア(スペイン)国王およびローマ教皇のもとへ使節団を派遣した。これが「慶長遣欧使節」で、幕府の正使は宣教師ルイス・ソテロ、そして政宗の大使に任命されたのが家臣の支倉常長(はせくらつねなが)だった。使節団は、仙台藩で建造された洋式帆船サン・ファン・バウティスタ号で太平洋を横断しノビスパニアへ、さらに大西洋を航海してヨーロッパに渡りローマ教皇に謁見した。帰国したのは7年後のこと。使節団が出帆したのは現・石巻市の月浦。そこから車で20 分ほどのところに宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)がある。

サン・ファン館の展望棟では、使節船が出帆するシーンから支倉常長がローマ教皇と謁見するまでの足跡を、パネルやレリーフ、映像などで紹介している。ローマ教皇との謁見の場面は、レリーフで再現された人物像に映像が次々に投影され、浮かび上がる支倉の表情からは興奮と緊張が伝わってくる。

大画面のシアターで上映される映像やドック棟に展示されている船内での乗員の生活を再現したジオラマなどから、この時代に大洋を航海することの困難さを立体的に理解することができる。あらためて支倉らの挑戦する勇気に感心した。

中央広場にあるサン・ファン・バウティスタ号の1/4スケールの復元船と、ドック棟にある帆船の建造工程を併せて見ることで、イスパニア人の指導を受けたとはいえ、当時の船大工が発揮した技術水準の高さがよくわかる。

サン・ファン館では、ロープワークなどの体験プログラムも用意されている。また、昼食会場も提供してもらえるのでぜひ活用してほしい(要予約)。

▼仙台藩の重臣片倉氏の居城と武家屋敷

伊達政宗の片腕として活躍した片倉小十郎景綱。その片倉氏の居城・白石(しろいし)は、仙台藩の南の要衝、東北自動車道白石ICから約10分の現・益岡公園にあった。

城は明治時代に解体されたが、三階櫓(さんかいやぐら)(天守)は、材木はすべて国産材、土壁を漆喰で仕上げるなど、古来の工法で江戸時代の建築が忠実に復元されている。内部を見学すると1・2層につくられた板張りの「武者走り」や石落しといった当時の城郭のつくりがよくわかる。

白石城三階櫓のすぐ近くに歴史探訪ミュージアムが設けられている。資料展示館(2階)での白石城本丸や城下町の復元模型、片倉家に伝わる甲冑や刀剣などの展示と立体ハイビジョンシアター(3階)で上映される映像で、片倉氏や白石城の全体像を学ぶことができる。

白石城から徒歩約10分、三の丸の外堀にあたる沢端川(さわばたがわ)に面した住宅街の一角に、江戸時代の武家屋敷が残されている。これは、片倉家に仕えた中級武士・小関家の屋敷だったもので、享保一五(1730)年に建てられたことがわかっている。

母屋は土壁、屋根は茅葺きの寄棟造りで、武家屋敷というイメージには遠い。内部を見ると、床の間のある座敷と納戸、囲炉裏のある茶の間と台所からなる簡素なつくりで、伊達家家臣に仕える中級武士の質素な暮らしぶりが想像できる。

城下町の雰囲気が感じられる武家屋敷の周辺を歩いてみるのもよいだろう。

白石城三階櫓(写真提供:宮城県観光戦略課)
武家屋敷
こけしの絵付け体験
▼こけしの絵付け体験(弥治郎こけし村)

簡略化された愛らしい姿・形が魅力の宮城伝統こけしは、江戸時代末期に温泉地でつくられはじめたという。もともと椀や盆などをつくっていた木地師が、副業としてつくった木地人形が湯治客の土産物として売られていたもので、現在は、弥治郎こけしのほか、鳴子こけしや遠刈田こけしなど、それぞれ特徴のある5系統が知られている。

白石市の鎌先温泉に程近い弥治郎地区も木地師の集落だったところ。ここでつくられる「弥治郎こけし」は、ベレー帽をかぶったように見える頭部の輪が特徴だ。東北自動車道白石ICから約15分の「弥治郎こけし村」は、1階にこけしの歴史や弥治郎こけしの製作工程を実物や写真・映像などを通して学べる展示資料室があり、2階には、展示販売とこけしの絵付け体験ができるスペースがある。

こけし工人さんの指導を受けながら、絵付けを体験した。今回は、最初にろくろを使い、白木地のこけしの頭に輪を描く。絵の具は黒・赤・黄など5色。筆を強く押し付ければ太い線になる。ろくろの回転が思ったより早いので、あっという間に描けるがやり直しはきかない。髪とかんざしなどを描いたあと、メインの顔に移る。これも一発勝負なので全集中。緊張で手が小刻みに震えるが、何とか描くことができた。表情は描いている人に似るというがどうだろう。最後に胴部の着物の模様を描いて完成。ここまでで1時間以上かかった。こうした作業が迷いなくできる工人の技の凄さを、あらためて実感した体験だった。絵付けしたこけしは、その日に持ち帰ることができるのでお土産にもピッタリ。

こけし村の敷地内には、こけし工人の工房が5軒あって見学ができる。ぜひ工人の技を間近に見てほしい。
食事・宿泊施設情報
伊豆沼の白鳥
〇いしのまき元気いちば

三陸自動車道石巻河南ICから約10分、旧北上川に面していしのまき元気いちばがある。1階が鮮魚や農産物などの物販コーナー、2階が約140席ある食堂になっている。団体が利用するには予約が必要で、食事は統一メニューから選ぶことになるが、リーズナブルな価格で魚介など石巻の旬の味が楽しめる。石森章太郎萬画館もすぐ近くだ。

〇伊豆沼農産 くんぺる農場レストラン

オオハクチョウの越冬地として知られる伊豆沼。そのほとりにあるのが伊豆沼農産 くんぺる農場レストラン。メニューは、伊達の赤豚や地元産の米・野菜、自社工場製のハムなどを使ったものだ。通常は約40席、貸切の場合は80名近くまで対応できる。手づくりウィンナーや手づくり豚まんなどの体験もできるので、食事と併せて利用するのもよいだろう。

〇南三陸ホテル観洋

三陸の海に面して建つこのエリア最大級のホテル。大規模校の利用もでき、受入実績も豊富にある。東館・南館があり、修学旅行生は南館の和室を利用する。宴会場や100名が一度に利用できる温泉大浴場も利用できる。夕食はセットメニュー、朝食はバイキングまたはセットメニューから選択する。アレルギーや宗教食への対応も可能。

東日本大震災ではホテルも一部が被災したが、住民の避難所として利用された。その際、館内で実施されたソロバン教室は、今も続いているという。また、震災の経験を伝える各種の学習プログラムも提供されている。

〇 (遠刈田温泉)メルキュール宮城蔵王リゾート&スパ

蔵王連峰を望む高原に立地するホテルで、白石ICからは約30分。洋室・和室があり、どちらを利用するかリクエストできる。最大受入れ人数は約300名。男女でのフロア分けが可能だ。部屋は廊下を挟んで両側に並び、生徒の動きを把握しやすい。風呂は、部屋の浴室を利用するのが基本だが、大浴場の利用については要相談。朝食・夕食ともビュッフェ形式、貸切専用会場で全員一緒に摂る。食物アレルギーや宗教食への対応も可能。

【問い合せ先】
宮城県 経済商工観光部 観光戦略課
宮城県仙台市青葉区本町3―8―1
TEL:022―211―2755

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