視察レポート
沖縄の新たな「学び」のプログラム(2026年7月号掲載)
2026-07-06
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文・写真=(公財)日本修学旅行協会 理事長 竹内 秀一
月刊「教育旅行」2026年7月号掲載
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。
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高校の修学旅行で一番人気の旅行先・沖縄。沖縄修学旅行では多くの学校が平和学習をメインテーマにしているが、美しい海と亜熱帯の森での自然・環境学習、本土とは異なる歴史を歩んできた琉球・沖縄の歴史・文化学習など、沖縄の「学び」のプログラムは豊富で、しかもそれぞれが学習指導要領の内容を踏まえてブラッシュアップされている。昨年オープンしたジャングリア沖縄や、復元工事の完了が今年の秋に迫った首里城正殿などを活用した新たなプログラムも期待される。
今年1月、沖縄県と(一財)沖縄観光コンベンションビューローが主催する「沖縄修学旅行モニターツアー」に、中学・高校の先生たちとともに参加させていただき、沖縄の新たなプログラムを体験した。
今年1月、沖縄県と(一財)沖縄観光コンベンションビューローが主催する「沖縄修学旅行モニターツアー」に、中学・高校の先生たちとともに参加させていただき、沖縄の新たなプログラムを体験した。
「深い学び」につながる平和学習プログラム
●平和祈念公園での平和学習/ピースパークツアー沖縄
沖縄戦終焉の地・糸満市摩文仁(まぶに)に位置する平和祈念公園内には、平和祈念資料館や平和祈念堂、平和の礎(いしじ)などがあり、多くの学校が修学旅行で訪れている。
本ツアーでは、(株)うむさんラボが提供している「ピースパークツアー沖縄(平和の礎ガイド)」を体験した。平和祈念公園の西の端、平和の広場を中心に放射状に弧を描くようにびっしりと黒い御影石の碑が建てられている。これが「平和の礎」。その表面には、沖縄戦で亡くなられたすべての人々(沖縄出身者は、1931年の満州事変から終戦までの期間に戦争が原因で亡くなった人々)の氏名が刻まれている。その数24 万人余り。ピースバディ(平和ガイド)の説明を聴きながら、碑の一つ一つを見ていく。
テーマは「命(ぬち)どぅ宝」。碑には、軍人・軍属や住民など、肩書を問わず等しく刻銘されている。戦争に奪われた一人ひとりの人生。刻まれた名前からは命の重さが伝わってくる。朝鮮や台湾の人々の氏名もある。そこでは、日本の加害についても語られる。沖縄戦で連合軍を率いた最高指揮官バックナー中将をはじめ米・英軍の兵士の名も刻まれている。敵・味方を区別していないことも「平和の礎」の特徴だ。
「ピースパークツアー」では、碑についての説明だけでなく、各所で問いかけがあり、最後に感じたことをお互いの言葉で共有する。「平和の礎」を通して考えた「私たちにとっての平和」について、それぞれの視点からの意見に触れることで参加者は自分の考えをより深めることができる。
「願う平和」から「育む平和」へ。生徒自身が平和の担い手であるという意識を高めるうえで、このプログラムの学習効果は十分に期待できるものだ。
●沖縄戦の全体像を学ぶ/平和祈念資料館
平和祈念公園の一角にある沖縄平和祈念資料館は、沖縄戦を中心に明治時代から戦後に至るまでの沖縄の歴史を、映像や実物、復元模型などで体験的に学ぶことができる資料館だ。
常設展示は、明治政府による「琉球処分」(武力を背景に琉球を強制的に日本に統合した過程)から沖縄戦直前までの歴史をたどる第1展示室から始まる。「琉球処分」に加え、沖縄での皇民化政策やスパイ取り締まりなど、政府が沖縄をどう捉えていたかがよくわかり、これが、後に沖縄が「捨て石」とされる根底にあったことが理解できる。
第2~第4展示室は、住民視点での沖縄戦の実相が示される。物量にモノを言わせて進撃する米軍、住民を巻き込んでの持久戦を続ける日本軍。その中で起きた日本兵による住民虐殺や強制的な集団死など、まさに地獄と化した沖縄が、映像や写真で示される。なかでも、ガマの中で泣いている赤ん坊の口を必死に押さえる母親とその傍で銃剣を構えて威嚇する日本兵のリアルな再現模型は、次に何が起こるかを想像させ胸が痛む。第4展示室の沖縄戦体験者による証言映像や証言集は、沖縄戦を風化させないための貴重な生の声としてぜひ視聴しておきたい。
第5室は、米軍統治下で基地の島となった沖縄の状況と、それが現在の沖縄につながり、多くの問題が起きていることがわかる展示になっている。
沖縄戦を通して「戦争と平和」について考えるためには、まず、沖縄戦そのものについてしっかり学んでおく必要がある。そうした学びに最適な沖縄平和祈念資料館を、十分に時間をかけて見学することをおすすめめしたい。
●体験・対話を通して考える平和/ミライバトンの平和学習プログラム
ミライバトンは、沖縄の大学生とともに「体験」し、「対話」を通して平和について考える修学旅行プログラムを提供している。基本的なプログラムは、米軍基地や沖縄戦の跡地を巡り、現地の人の声も聴きながら課題などを抽出する「体験型現地学習」とグループでの意見交換を通して課題を共有し、自分ができることを深化させる「対話型交流学習」からなっている。ツアーでは、「対話型交流学習」を体験した。
10名のグループに進行役として大学生1名がつく。はじめに、参加者から「平和の礎」を巡っての感想を発表。ついで、自分にとっての「平和の色」をあげ、なぜその色なのかの理由を説明した。あがってきたのは、青や白、緑。なかには黒をあげた参加者もいた。それぞれが抱く「平和」に対するイメージがわかり、その後の「戦争を防ぐためには」「誰が平和をつくるのか」といった課題についての意見交換が円滑に進んでいった。
進行役からは、沖縄でずっと暮らしてきた自身にとっての沖縄戦や、沖縄戦を体験した祖母に関すること、毎年6月23日(「沖縄慰霊の日」)に行う黙祷についての思いも語られた。
これからの教育旅行では、現地の方々との交流や仲間同士の意見交換を通して学ぶことが重要になってくる。ミライバトンの平和学習プログラムは、そうした学校のニーズに応えるもので十分に期待できる内容だ。
沖縄ならではの自然を活かした学習プログラム
●沖縄の海を学ぶ/GODACの教育プログラム
沖縄北部名護市の太平洋側にあるGODAC(国際海洋環境情報センター)は、JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)の拠点の一つで、JAMSTECの研究データの集積と発信、青少年の人材育成などを目的とする海洋科学技術への理解増進を担っている。
館内には、有人潜水調査船「しんかい6500」とそのコックピットや深海の熱水を噴出する「チムニー」に群がる深海生物の模型、珍しい深海生物の標本などが展示され、JAMSTECの研究活動についての紹介もある。予約すればGODACのスタッフによるガイドで館内を見学することもでき、海と地球について深く学ぶことができる。JAMSTECの中でも、展示と学習プログラムが充実しているのがGODAC。しかも無料だ。
館内見学のほか、GODACでは、「海洋ごみ問題」「海の生物多様性」「海洋科学に関わるお仕事」など、沖縄の海を教材として「学ぶ」6つの「教育プログラム」を提供している。それらのうち、サンゴを中心とする「沖縄の海について」学ぶプログラムを体験した。
プログラムは、スライドやサンゴの骨格標本などを用い、受講者への質問や実験を交えながら進められていく。最初に、サンゴの生態について。次に、沖縄の人々の暮らしとサンゴとの関りについて。サンゴの死骸が堆積してできた琉球石灰岩が沖縄の島をつくり、生活に必要な水を貯え、切り出した石で建造物がつくられていること。サンゴ礁が高波から島を守っていることなど、サンゴが沖縄での暮らしにとって不可欠なものだったことがよく理解できた。そのサンゴに危機的な状況をもたらしているのが「海洋酸性化」。増加したCO2が海水に溶けて酸性化した海は、サンゴの炭酸カルシウム骨格が成長しにくくなってしまうという。CO2は地球の温暖化だけでなく、海洋環境も悪化させていることが衝撃だった。
海への興味・関心があるなしに関わらずしっかり学ぶことができる内容で、学校の要望に応じてアレンジもできるとのこと。すべての教育プログラムが無料で提供されているのもありがたい。
●清流リバートレッキング/がじゅまる自然学校
名護市真喜屋(まきや)にあるホールアース自然学校沖縄校がじゅまる自然学校は、本州とは異なる沖縄の自然を、五感を使って体験することを通して自然を大切にする心を育てるプログラムを提供している。今回は、「清流リバートレッキング」を体験した。
名護市の「羽地の駅」からバスで15分ほど、農村地帯を抜けるとやんばるのジャングルが広がる。ガイドさんの解説を聴きながらその中を歩いていく。本土では園芸店でしか見られないクワズイモや巨大なシダ、シリケンイモリなど沖縄ならではの植物や生き物が目に留まる。浅い川の中を歩きながら、石を裏返してみると、そこにも見慣れない生き物がいる。澄んだ水の流れも心地よい。やがて滝の音が聞こえてくる。そこがトレッキングのゴールだ。勢いよく流れ落ちる滝、暑いときには滝つぼで泳ぐ生徒もいるとのこと。
全行程の所要時間は3時間だが、自然の中での体験で疲れを感じることはない。川の流れは緩やかで、安全にトレッキングできる。装備は、濡れることを想定した長袖・長ズボンと靴、飲み物やタオルなどと着替えがあればよい。
海ばかりが注目される沖縄だが、亜熱帯のジャングルで体験できるプログラムはここだけのもの。ぜひ、やんばるの豊かな自然を体感してほしい。
●テーマパーク体験と探究型学習プログラム/ジャングリア沖縄
昨年7月、沖縄北部にオープンしたジャングリア沖縄は、やんばるの自然を活かしたテーマパークで、県外からも多くの学校が訪れている。
パークのアトラクションで一番人気の「ダイナソーサファリ」を体験した。太古のジャングルを再現したエリアを、特殊車両に乗って巡り、襲ってくる肉食恐竜T-REXから逃げていく。途中にいるトリケラトプスなどの草食恐竜、突然姿を現し咆哮するT-REX、どれもリアルで迫力満点。デコボコのオフロードを駆け抜ける特殊車両は、キャストが実際に運転しているだけにアトラクションとは思えない現実感がある。体験時間は約17分と比較的長く、十分に楽しめる。整理券の対象ではないので、並ぶつもりでいてほしい。
ジャングリア沖縄では、教育旅行向けのチームビルディングと探究学習の団体プログラムを提供している。
チームビルディングプログラムは、1チーム4~6名で、パーク内に設置された多くの謎を解いていき、制限時間内に解けた数を競うもの。事前の作戦やチーム内でのコミュニケーションがカギになる。
探究学習プログラムのうち「NEXTジャングリアプロジェクト」は、ここだけでしかできない特別なプログラム。ジャングリア沖縄にある60haもの未開拓地を、街としてどのようにデザインしていくか。やんばる地域を調査して地域の課題を掴み、インタビューを通じて地域の人々の声を聴く。それらを踏まえたうえで自らの構想を練り上げ、発表するといった内容(ここまでが前半)。難易度は高そうだが、ファシリテーターがついてくれるので問題はないだろう。後半はパーク内での自由な活動になる。学習効果が大いに期待できるプログラムだ。
名護市真喜屋(まきや)にあるホールアース自然学校沖縄校がじゅまる自然学校は、本州とは異なる沖縄の自然を、五感を使って体験することを通して自然を大切にする心を育てるプログラムを提供している。今回は、「清流リバートレッキング」を体験した。
名護市の「羽地の駅」からバスで15分ほど、農村地帯を抜けるとやんばるのジャングルが広がる。ガイドさんの解説を聴きながらその中を歩いていく。本土では園芸店でしか見られないクワズイモや巨大なシダ、シリケンイモリなど沖縄ならではの植物や生き物が目に留まる。浅い川の中を歩きながら、石を裏返してみると、そこにも見慣れない生き物がいる。澄んだ水の流れも心地よい。やがて滝の音が聞こえてくる。そこがトレッキングのゴールだ。勢いよく流れ落ちる滝、暑いときには滝つぼで泳ぐ生徒もいるとのこと。
全行程の所要時間は3時間だが、自然の中での体験で疲れを感じることはない。川の流れは緩やかで、安全にトレッキングできる。装備は、濡れることを想定した長袖・長ズボンと靴、飲み物やタオルなどと着替えがあればよい。
海ばかりが注目される沖縄だが、亜熱帯のジャングルで体験できるプログラムはここだけのもの。ぜひ、やんばるの豊かな自然を体感してほしい。
●テーマパーク体験と探究型学習プログラム/ジャングリア沖縄
昨年7月、沖縄北部にオープンしたジャングリア沖縄は、やんばるの自然を活かしたテーマパークで、県外からも多くの学校が訪れている。
パークのアトラクションで一番人気の「ダイナソーサファリ」を体験した。太古のジャングルを再現したエリアを、特殊車両に乗って巡り、襲ってくる肉食恐竜T-REXから逃げていく。途中にいるトリケラトプスなどの草食恐竜、突然姿を現し咆哮するT-REX、どれもリアルで迫力満点。デコボコのオフロードを駆け抜ける特殊車両は、キャストが実際に運転しているだけにアトラクションとは思えない現実感がある。体験時間は約17分と比較的長く、十分に楽しめる。整理券の対象ではないので、並ぶつもりでいてほしい。
ジャングリア沖縄では、教育旅行向けのチームビルディングと探究学習の団体プログラムを提供している。
チームビルディングプログラムは、1チーム4~6名で、パーク内に設置された多くの謎を解いていき、制限時間内に解けた数を競うもの。事前の作戦やチーム内でのコミュニケーションがカギになる。
探究学習プログラムのうち「NEXTジャングリアプロジェクト」は、ここだけでしかできない特別なプログラム。ジャングリア沖縄にある60haもの未開拓地を、街としてどのようにデザインしていくか。やんばる地域を調査して地域の課題を掴み、インタビューを通じて地域の人々の声を聴く。それらを踏まえたうえで自らの構想を練り上げ、発表するといった内容(ここまでが前半)。難易度は高そうだが、ファシリテーターがついてくれるので問題はないだろう。後半はパーク内での自由な活動になる。学習効果が大いに期待できるプログラムだ。
今だから学べる復元途中の首里城
●文化財の復元過程を学ぶ/首里城公園
首里城は、江戸時代に3度焼失し、沖縄戦で4度目の焼失、そして2019年10月の火災で正殿・北殿・南殿が全焼、という経験をしている。そのたびに復元されてきたが、現在は「見せる復興」として復元工事の過程が公開されている。
今回の工事では、たとえば琉球伝統の赤色顔料を復活させ建物の塗色に使用するなど、「伝統技術の活用と継承」を軸にして、1712年に再建された首里城に復元することが目指されているという。そのような技術の詳細が試作品や装飾品などを通して学べる施設が「復興展示室」と「世誇殿(よほこりでん)」。実物の素材に触れることもでき、映像や解説も充実している。また、完成間近となった正殿の外観や現在行われている工事の様子を、見学デッキから見ることができる。仮囲いにはこれまでの工事の過程を示すパネルが掲示され、デッキを歩きながらその工法や用いられた建築技術などを知ることができる。
文化財学習では、その文化財の保全・復元に携わる技術者の「技」や用いられる道具、素材などを学ぶことも、新たな視点として重要になっている。復元途中の首里城の見学は、今だからこそできる新視点の文化財学習だといえるだろう。
食事・宿泊施設情報
○とぅばらーま 国際通り店
ゆいレール牧志駅近く、国際通り沿いにある。「とぅばらーま」とは八重山地方を代表する民謡のことで、毎晩、三線と島唄のライブが行われる。食事は沖縄の郷土料理。昼食・夕食のメニューも豊富だ。ホールの1階は160名、2階は60名、一度に最大220名までの受入れができる。
○御菓子御殿名護店 うどぅん
紅いもタルトで知られる御菓子御殿の名護店向かいにある御殿(うどぅん)は、自家製沖縄そばや紅いもなど沖縄の素材にこだわった料理を提供している。ソーキそばとジューシー(沖縄風炊き込みご飯)、紅いもコロッケのセットなど修学旅行用のメニューが用意されていて、沖縄の食をリーズナブルに味わうことができる。大規模な団体の受入れも可能だ。
○ホテルリゾネックス名護
東シナ海に面した大型のホテルで洋室・和洋室がある。全室がオーシャンビューで、生徒の動きも把握しやすい。宴会場もある。食事は夕食・朝食ともにビュッフェ形式で、地元の食材を活かした料理が提供される。風呂は、各部屋の浴室を使用する。300名規模の修学旅行団体の受け入れもできる。美ら海水族館へは、貸切バスで30分ほど。
○南西観光ホテル
ゆいレール牧志駅の近くに立地していて、国際通りや公設市場を訪れるにも便利。修学旅行団体の受入れ実績は豊富だ。部屋はすべて洋室で、シングルルームから最大5名が宿泊できるフィフスルームまで様々なバリエーションがある。食事は、2会場を利用すれば最大220名(約4クラス)まで可能。夕食・朝食ともビュッフェ形式になる。チェックアウト後の国際通り散策の際には、本部としての利用もできる。360名規模の修学旅行の受入れも可能。
宿泊費や交通費など旅行費用の高騰で、沖縄修学旅行を断念せざるを得ない学校も出てきているようだ。旅行費用の総枠が決まっているなら、何に費用を費やすかが工夫のしどころ。ここで紹介したように沖縄には、多彩な「学び」のプログラムがある。諦める前に、それらを旅費の枠に収まるよう上手に組み合わせ、学校のねらいに沿った独自の行程を創っていただくことをお願いしたい。
【問い合せ先】
(一財) 沖縄観光コンベンションビューロー
TEL:098―859―6129













