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掲載記事・視察レポート

視察レポート

東京から新幹線で約3時間! 青森県の歴史・文化・自然を学ぶ教育旅行プログラム(2026年2月号掲載)

2026-02-05
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文・写真=(公財)日本修学旅行協会 事務局長 藤川 誠二

月刊「教育旅行」2026年2月号掲載
※本記事中の情報は執筆当時のもので、その後変更されている場合があります。
最新情報は問い合せ先にご照会ください。

距離は近いのに世界が異なる「青森」と「函館」。一回の旅行で「二つの旅」を経験できるとも言える「青森・函館」修学旅行が、首都圏の学校でじわじわと人気が出ているようだ。そんな中、(公社)青森県観光国際交流機構より視察の機会を得て、青森県内の修学旅行で人気のエリアやプログラムを見学・体験してきた。
市場で堪能する青森の食文化/青森魚菜センター「のっけ丼」
のっけ丼
「のっけ丼」は、市場内のお店に並ぶ青森ならではの新鮮な魚介類をはじめ、総菜、地元の特産物や名物から、自分の好きな具材を好きな量選び、ご飯にのっけて食べる、青森魚菜センターで人気のメニュー。青森魚菜センターは、地元の人々の生活に欠かせない市場を体感できることと合わせ、修学旅行生にもぜひ訪れてほしい場所だ。大人数での訪問には適さないが、2階に団体用の席も確保されているので、コース別や班別自主研修中などにはおすすめ。12枚つづりの食事券を使って、最初にご飯を引き換えた後は、1枚で引き換えられる食材や、2~3枚を要する食材を一人一人吟味しながら「のっけ丼」を作っていく。見た目や味を友達と共有したり、焼きたての甘く濃厚な卵焼きを食べ比べてみたりすることは、少しだけ贅沢で、楽しい時間となることだろう。
青森の祭りを学び・体感する/ねぶたの家ワ・ラッセと青森観光物産館アスパム
ねぶたの家ワ・ラッセ
青森市文化交流施設ねぶたの家ワ・ラッセは、ねぶたの由来や歴史、制作工程などについて、タイムトンネルを歩きながら学べるようになっていて、ねぶたの構造や細やかな制作技術を直接触れて学べる展示がある。展示されている大型のねぶたを見るだけでも充分その迫力を感じることができるが、大型スクリーンで上映される実際の運行の様子は圧巻だ。ちなみに、「ワ・ラッセ」とは、ねぶたの掛け声である「ラッセラー」と「笑い」の他に、祭りでの人と人の『輪』や調和の『和』、また、ねぶたを通じた活動により育まれる市民の『環』をコンセプトとしているそうだ。青森ねぶたの魅力やパワーを体感できる素晴らしい施設で、ねぶた囃子の生演奏や跳人(はねと)体験など、学校団体用の体験メニューも用意されている。

アスパム展望台から望む青森港
ねぶたの家ワ・ラッセを展望台から眼下に見下ろすことができるのが青森県観光物産館アスパム。Aomori (青森)・Sightseeing(観光)・Products(物産)・Mansion(館)の頭文字から命名されている、青森県の観光、物産、郷土芸能などを総合的に紹介する情報発信基地だ。地上51メートルの展望台からは、青森市街を一望できる。2階の青い森ホールでは、「三六〇℃シアター」で青森の美しい四季と祭りを大迫力の映像で体感できる。ワ・ラッセでは青森ねぶたの展示が主だが、この映像の中では、弘前ねぷたや五所川原立佞武多(たちねぶた)についても学ぶことができる。1階では青森県の様々なお土産を購入できる。

「ねぶた」の語源や「ねぶた」と「ねぷた」の違い、青森県を代表する3つの祭りのそれぞれの特徴などを、生徒たちに深く学ばせたい。クラス数が多い場合には、ワ・ラッセとアスパムをローテーションで訪問するとよいだろう。徒歩でも移動できる位置関係なので、ぜひ両施設ともに行程に入れてほしい。

縄文の歴史・文化と縄文人の生活を身近に感じる/三内丸山遺跡
三内丸山遺跡 大型掘立柱建物
三内丸山遺跡では、ボランティアガイドが定時で案内をしてくれる。かなり広い遺跡なので、案内を聞きながらの見学はあっという間に60分を経過していた。平成四(1992)年から始まった発掘調査は現在も続いているが、見学コースでは、三内丸山遺跡保存のきっかけになったとも言われる大型掘立柱建物跡や、それを基に想定復元された建物を至近距離で見ることができる。物見やぐらや祭殿だった可能性が高いとされながらも、まだ明確なことはわかっていないという壮大なこの建物を見上げると、歴史のロマンを感じずにはいられない。

学校団体の場合は、事前予約が必要だが、ワークシートも用意してくれるので、ガイド付きでの見学をおすすめしたい。高校生以下はガイド代は無料なので、費用面でも安心だ。また、今回は遺跡を見学してから「縄文シアター」を鑑賞したが、学校行事で訪問する際は、先に縄文シアターで発掘調査の様子などを学んでおく方がよいだろう。復元した建物や盛土について理解が深まるはずだ。

常設展示室「さんまるミュージアム」では、大型板状土偶や縄文ポシェットなどの重要文化財のほか、縄文人の生活を再現した展示があり、出土品から考えられる当時の暮らしの様子が上手く紐解かれている。

時間に余裕がある場合や、もの作りを体験させたい場合には、体験工房に各種体験メニューが用意されている。また、すぐ近くには青森県立美術館があり、学生団体は入場無料なので、一緒に訪問する学校が多いそうだ。

十和田湖のシンボル/乙女の像と十和田神社
十和田湖畔の散策では、乙女の像を見学し、十和田神社を参拝した。

乙女の像の作者である高村光太郎は詩人のイメージが強いが、彫刻作品も美術の教科書に載っている。高村光太郎は、乙女の像が完成した3年後に亡くなっていて、これが最後の彫刻作品とされている。十和田湖畔の景観と絶妙に合っていて、十和田湖のシンボルとなっていることを改めて実感した。

十和田神社は、乙女の像からほどない場所にある。とても神秘的なエネルギーを感じたが、かつては恐山と並ぶ二大霊場として信仰を集め、修行場として栄えていた神社だそうだ。杉木立の参道や、厳かな雰囲気で佇む本殿や拝殿は一見の価値がある。

十和田湖遊覧船は、湖畔から見るのとはまた違った趣がある十和田湖の風景を楽しむことができる。修学旅行生にも人気で、二重カルデラ湖の誕生と十和田湖に伝わる伝説や歴史などを船内放送で案内してくれる。休屋を出発して奥入瀬(おいらせ)渓流の河口、子(ね)ノ口に着くコースと、そのまま休屋に戻るコースの2つがある。

乙女の像
十和田神社
ガイドと一緒に歩く美しい自然/奥入瀬渓流散策
銚子大滝
奥入瀬渓流散策での見どころをいくつか紹介する。

十和田ビジターセンター あまり広い施設ではないが、十和田湖や奥入瀬渓流の自然について、模型やパネル展示でわかりやすく紹介されている。散策前の事前学習にも繋がるので、小規模の学校・グループであれば訪問してみてほしい。

銚子大滝 奥入瀬渓流の一番の名所と紹介されている、落差7メートル、幅20メートルの滝。美しい景観だけでなく、遊歩道を歩いている際に徐々に聞こえてくる滝の音と、近づいた際に体感する豪快な水の音との違いや、滝周辺に香る心地よい匂いなど、五感を刺激してくれる場所だ。

白糸の滝 銚子大滝とはまったく趣が異なる、白い絹糸のような水が流れ落ちる滝。遊歩道から木々の向こうに見ることができるが、神秘的で美しい滝だ。

雲井の滝 高さ20メートル、三段になって落下する見ごたえのある滝だ。
阿修羅の流れ
阿修羅の流れ 誰もが抱く奥入瀬のイメージそのものという景観を楽しめる場所だ。岩の間を激しくうねりながら流れる水の様子と音は、その名の通り力強いものだった。

石ケ戸 「ケ戸」とは、この地域のマタギの言葉で「小屋」を意味し、石ケ戸は石でできた小屋、いわゆる岩屋を意味している。確かに、大きな岩がその後ろの岩や老木によって支えられている様子は、岩屋のようだった。

奥入瀬渓流は遊歩道が整備されているので、雨天時でもカッパを着用すればずぶ濡れになることはなさそうだ。少しの時間・距離でも、実際に渓流沿いを歩くことは、豊かな自然を感じられる貴重な体験になるはず。ただし、貸切バスを乗降するために停車できる場所は限定されているので、その点は充分注意をしてほしい。

今回はネイチャーガイドの案内で散策したが、修学旅行で訪れる際にも、生徒たちにネイチャーガイドをつけてあげたいと強く思った。ガイドさん自身が自然を愛していることが感じられ、奥入瀬の景観をこれからもずっと守っていきたいという想いを案内しながら話してくれ、美しい景観の中で聞く話は、どれもすっと入ってくる。これから訪問を予定している学校は、ぜひ検討してほしい。

十和田市民の味を堪能/十和田バラ焼き

十和田市民に愛されているという「十和田バラ焼き」は昼食に適している。牛のバラ肉と大量の玉ねぎを醤油ベースの甘辛いたれで味付けし、鉄板で焼く料理だが、発祥は、今から約50年前の三沢米軍基地前の屋台と言われ、同じ文化圏の十和田市に広まったそうだ。
街に開かれたミュージアム/十和田市現代美術館
十和田市現代美術館
十和田市現代美術館は、日本の道百選の一つに選ばれ、桜の名所として知られている十和田市官庁街通りの中ほどにある。個々の展示室がガラスの廊下でつながっている、特徴のある建物だ。アート作品が街中に展示されているような開放的な構成になっていて、美術館と通りを挟んで対面する3つのアート広場にも様々な作品が存在している。通り全体を大きなアート空間と見立てて、国内外のアート作品を展開していく試みを行っているとのことだ。

宿泊施設情報

青森と秋田の県境に位置し、奥入瀬渓流や十和田湖畔の観光に最適な場所となる十和田湖畔温泉。宿泊したホテル十和田荘は、80名から800名まで対応可能な食事場所があるので、多人数の学校でも安心だ。広い大浴場もあり、東北ならではの大きな温泉旅館タイプで、ゆったりした滞在が味わえる。


東北新幹線の最高速度引き上げで、東京から新青森まで約3時間でのアクセスが可能となった。また、北海道新幹線で、新青森から新函館北斗まで約1時間で移動できる。青森空港へは名古屋(小牧)からの航空便も就航し、利便性が一気に高まった青森方面への修学旅行は、これからますます増えていくのではないだろうか。今回の視察では、歴史や伝統文化、自然をバランスよく学べる地域であることを改めて実感した。方面検討の際には候補地に入れることを、ぜひおすすめしたい。

【問い合せ先】
(公社)青森県観光国際交流機構
TEL:017―722―5080
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