
ご あ い さ つ
昭和27(1952)年に発足した日本修学旅行協会は、昨年度、設立70周年を迎えることができました。このことは、ひとえに皆様からいただきました当協会への厚いご支援の賜物と存じ心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
当協会は、平成25(2013)年4月より公益財団法人として歩みはじめましたが、一昨年から続くコロナ禍にあっても、当協会が担っております公益事業は滞ることなく順調に進められております。
当協会では、教育旅行を、学習指導要領において「旅行・集団宿泊的行事」として位置づけられている学校の教育活動のうち、修学旅行を主とするものととらえています。日本の優れた教育文化として定着しております修学旅行は、生徒たちが「平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむ」貴重な学びの場であるとともに「集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積む」うえでの大切な機会であり、社会のグローバル化に対応する国際理解や国際交流の促進にも大きな役割を果たしています。
修学旅行を主とする教育旅行のさらなる充実と発展を図るため、当協会では、学校教育により「持続可能な社会の創り手」を育てるという新学習指導要領の主旨を踏まえるとともに、教育旅行を「探究的な学習」を展開するにふさわしい場として、SDGsに関わる地域の多様な取組や地球規模で自然や環境・人々の暮らしを考えるジオツーリズム、被災地の経験から学ぶ震災学習や防災・減災学習、農山漁村での体験的な活動やキャリア教育にもつながる産業観光など、新たな分野も積極的に取り上げていきたいと考えています。また、コロナ禍により大きな打撃を受けた海外修学旅行の再開を期して、アジアや北米、オセアニアなどの国や地域における教育旅行の適地を紹介し、あわせて訪日旅行の受け入れについても積極的に取り組んでいくつもりです。
具体的には、一昨年度からデジタル版もスタートさせた当協会発行の月刊誌「教育旅行」や教育旅行年報「データブック」において、修学旅行を主とする教育旅行の動向や実態、優れた実践例や教育旅行の適地などに関する情報を発信するとともに、シンポジウムで教育旅行の課題やあり方について議論し、さらに、各種セミナーなどを通して教育旅行誘致による地域の振興にも資するように努めていきます。
社会全体がウィズコロナで動くようになり、教育旅行も活発に動くようになってきました。日本修学旅行協会は、今年度時代のニーズと学校教育の動向を踏まえ、国内外の教育旅行の一層の発展を図るとともに、それを通じて地域の活性化にも貢献すべく事業を進めてまいります 。これまで同様、皆様のご指導とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます 。
各種メディアへの掲載等
・2020 9 21 日本教育新聞社「教育旅行特集」
その際には、新学習指導要領にいう「主体的・対話的で深い学び」を意識したい。「深い学び」とは「探究的な学び」に他ならない。高等学校に「○○探究」と名付けられた科目が新設されたのは、その表れであるといえる。当然、修学旅行にもその実践が求められる。
ただし修学旅行では、多くの学校がその行程の中に、生徒自身がテーマを設定、訪問先やコースを決めて活動し、事後に成果を発表するという「探究」といってよい学びをすでに取り入れている。それをさらに深化させるには、例えば、学年全体が同じところに行き同じ活動をする、といった従来のかたちにとらわれず、クラス別やコース別など複数のコースに分かれる分散型方式をとることが考えられる。こうすることで大集団というスケールデメリットが回避され、訪問先の選択肢が増えて生徒の探究学習をより円滑に進めることができる。分散型には「密集」のリスクを減らす効果もある。
はじめに旅行先ありきでなく、生徒が設定した課題を踏まえ、その解決に資することのできる活動形態や旅行先を考えていくことが「探究型」の修学旅行にとって必要なことではないか。また、修学旅行を単体の行事とせず、教科の学習や「総合的な探究(学習)の時間」などと緊密に連携させ、それらの学習の中から課題を見いだし、逆に修学旅行での成果をそれらの学習に生かしていくことも重要である。
「平素と異なる生活環境」にある修学旅行で、リアルな体験を通して学ぶことの意義はバーチャルとは比較にならない。このかけがえのない学びの機会の価値をさらに高めていくことが、これからの修学旅行に何よりも大切であると考える。